近年、商品・サービスの高度化・複雑化・モジュール化、製品・サービスのライフサイクルの短期化や新興国プレイヤーも含めた競争の激化から、これまでの自前主義でのイノベーションには限界が来ており、外部の技術やノウハウを活用し、新しい技術開発や新しい製品化・サービス化を実現するオープンイノベーションの重要性が指摘されています。
本記事では、
・オープンイノベーションとは?
・オープンイノベーションの種類
・中小企業がオープンイノベーションを行うメリット
・新型コロナウィルス化における中小企業のオープンイノベーションの事例2選
をご紹介します。
この記事を読み、自社の発展のためオープンイノベーションも視野に入れ事業の発展を目指していただければ幸いです。
オープンイノベーションとは?
始めに、オープンイノベーションについてご紹介させていただきます。オープンイノベーションとは「外部の技術やノウハウ、リソースの活用によって新たな技術開発や製品・サービス創出を目指す活動」のことをいいます。
例えば、寝具製作会社とアルコール製作会社が連携し「ウィルスの増加を抑えることができるベット」を開発するなどです。
1社では技術、リソース的に開発することができなかったものの、外部企業と連携することで開発することが可能になる。このような事象をオープンイノベーションといいます。
オープンイノベーションの種類
先ほどご紹介した、寝具製作会社とアルコール製作会社の事例は外部企業との連携によるオープンイノベーションの事例でしたが、オープンイノベーションには他にも種類があります。
こちらでは、オープンイノベーションの種類とそれぞれの取り組み状況についてご紹介させていただきます。
オープンイノベーションには大きく分けて3つの種類があります。
①アウトサイドイン型
②インサイドアウト型
③多対多の連携型
です。
①アウトサイドイン型
外部技術を自社内に取り込み連携をするオープンイノベーションのことを言います。
アウトサイドイン型に取り組んでいる企業は
製造業・・・19.0%
非製造業・・・16.1%
となっており、オープンイノベーションの中では最も利用している割合が多いものとなっています。
アウトサイドイン型オープンイノベーションの具体例としては、自社のライセンスを他社に売却するライセンスアウト、プラットホームを提供して他社と共同開発を行うなどがあります。特徴は’’相性のいい連携企業’’を見つけ、その企業と共同で新しいサービスを開発するより深い繋がりを実現するオープンイノベーションです。
②インサイドアウト型
自社の技術・知識を社外に発信することで連携を促すオープンイノベーションのことを言います。
インサイドアウト型に取り組んでいる企業は
製造業・・・12.0%
非製造業・・・8.4%
インサイドアウト型オープンイノベーションの具体例としては、他社が持つ特許権などを導入するライセンスインや産学連携などが該当します。特徴は、あくまでも自社のリソースを用いて自社のみで新しいサービスを生み出すということです。そのために、外部からの情報や仕組みを導入するオープンイノベーションです。
③多対多の連携型
広く連携先を募り共同開発をしていくオープンイノベーションのことを言います。
多対多の連携型に取り組んでいる企業は
製造業・・・4.2%
非製造業・・・4.5%
となっています。
これはオープンイノベーションの中でも最も新しいものでまだ割合こそ低いですが今後発展することが見込まれます。
多対多の連携型のオープンイノベーションの具体例としては、ハッカソンや事業連携などが挙げられます。アウトサイドイン型のように、他社と連携して新しいサービスを生み出しますが、連携するのは複数社となっています。またインサイドアウト型のようにスキルだけを提供していただく連携企業もあったりとその内容は様々で応用性が最も高いオープンイノベーションです。
では、次にオープンイノベーションに取り組み意向のある企業の割合をご覧ください。
中小企業がオープンイノベーションを行うメリット
オープンイノベーションの概念理解や、種類や状況についてはご理解いただけたと思いますが、なぜオープンイノベーションが中小企業には必要なのでしょうか?
ここでは、中小企業がオープンイノベーションを行うメリットについてご紹介します。
知識・ノウハウの蓄積に効果があった
オープンイノベーションは、自社では持っていないスキルや、資源、技術を外部から取り入れることに繋がるため、新しい知識を組織にもたらすことが可能です。また、非製造業はその割合が多く、他者の組織体制や管理システムなど技術以外での学びも多いと思います。
人材育成に繋がった
オープンイノベーションは、新規事業と似ておりお互いのリソースを分け合い新しいサービスを作ります。そのため、新規事業立ち上げのスキルや他社との連携スキルなど自社だけでは提供できない環境により人材育成に繋がる可能性が高いです。
新たな顧客ニーズの発見に繋がった
オープンイノベーションは、これまでの顧客層とは別の層や違う側面でアプローチできるため、顧客ニーズの発見に適しています。また、お互いがリソースや資金を分け合うため、例え新しいサービスが失敗したとしても損失が少ないメリットもあります。
ご紹介した全てが、停滞ではなく向上に繋がるメリットのため、オープンイノベーションは企業の成長にとても適しているといえます。
オープンイノベーションを行うデメリット
ここまで、オープンイノベーションのいい面だけをご紹介してきましたが、オープンイノベーションを行うデメリットももちろん存在します。ここではオープンイノベーションを行うデメリットをご紹介します。
独自技術漏洩のリスク
オープンイノベーションは、他者との連携です。つまり、お互いが自社のリソースや情報を公開し新しいサービスを生み出します。そのため、必然的に公開する予定のなかった情報も漏洩するリスクがあります。また、その情報が自社独自の技術であった場合の損失は非常に大きいです。オープンイノベーションを行う際は、情報の管理は徹底しなくてはいけません。
コミュニケーションコストの増大
オープンイノベーションは、外部の人たちと共同して事業を行います。これまで、接点のなかった人との共同事業はストレスもかかりますし、管理する方々のコミュニケーションコストも増えます。軽い気持ちで始めたはいいが、社員間のいざこざや上層部の衝突など新しいコミュニケーションコストが発生してしまいます。
以上のメリット、デメリットを踏まえた上で自社がオープンイノベーションを行う必要性があるのか?はしっかりと検討する必要があるかと思います。ただ、どうしても新型コロナウィルスなどで受け身になっている経営者も多いと思います。
そんな方へ向けて、新型コロナウィルス化でどのようなオープンイノベーションがあったのか?その事例をご紹介させていただきます。
新型コロナウィルス化における中小企業のオープンイノベーションの事例2選
では次に、新型コロナウィルスの蔓延により実際どのようなオープンイノベーションが中小企業から生まれたのかをご紹介します。
タクデリ
タクデリは、仙台で始まったオープンイノベーションによる新サービスです。顧客が減ってしまった地場のタクシー会社と飲食店グループが共同でテイクアウトの料理をタクシーが宅配するサービスとなっております。
お互いの余ってしまったリソースをうまく利用し合う事例として非常に参考になると思います。
参考:タクデリ
「#SafeHandFish」プロジェクト
「#SafeHandFish」プロジェクトは、100%天然素材の除菌抗菌液を販売するクリア電子、調味料の小型容器の製造・充填を行う大石屋、企画とクリエイティブを行うエードットが立ち上げたものです。「魚型の醤油差し」に除菌液を充填し、食を通して除菌を習慣化させることを目指しています。宴会やイベントの中止によって余った弁当用の調味料容器に除菌抗菌液を充填し、必要な人々に届けようとするプロジェクトです。
世の中の人々が必要としている感染防止と、余ってしまった醤油差しにアルコールを入れて安全な食文化を届けられるのは非常に魅力的なプロジェクトだと思いました。
どちらのオープンイノベーションも、1社では実現できなかったとともに、お互いの課題を解決する内容となっており理にかなった内容だと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
新型コロナウィルスの蔓延や、他社との競争が激化している現代、守りに入る企業が多いかと思います。しかし、そんな中でも新しい利益獲得のためにオープンイノベーションに挑戦している中小企業も存在していることが分かります。
こんな時期だからこそ、企業を成長させるためにオープンイノベーションを選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
<参考>
経済産業省:第2部 新たな価値を生みだす中小企業 中小企業庁