人手不足の救世主、産業用ロボット導入に向けて知っておきたい基礎知識

日本では他国に先駆けて少子高齢化が進んでおり、企業の人手不足にも影響が出ていると言われています。「人手不足に対する企業の動向調査(2020年4月帝国データバンク)」によると、正社員が不足している企業は31.0%。不足する人員分の業務を機器による自動化で補いたいと考える企業も多いのではないでしょうか。

しかし、現状の業務を単に自動化すると、多品種少量生産や新しい生活様式・働き方に柔軟に対応できなくなり、かえって足枷になるケースもあります。そこで自動化と柔軟な対応の両方を実現するために検討したいのが、産業用ロボットの導入です。この記事では、ロボットを導入するために知っておきたい基礎知識について、分かりやすくご紹介していきます。

産業用ロボットとは

産業用ロボットの定義は、日本工業規格JISによると「自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレーターであり、3軸以上でプログラム可能で、1か所に固定してまたは運動機能をもって産業自動化の用途に用いられるロボット」とされています。この中のマニピュレーターとは「操作して動かすことのできるもの」を意味しています。

産業用ロボットを導入するメリットは、多品種への対応や、機能追加といった汎用性にあります。製造業であれば、ほぼあらゆる分野で使用することができ、食品パッキング、医療器具等部品の搬送や電機品の組立等、幅広い用途で導入されています。そのようなメリットがあるため、世界の産業用ロボット稼動台数推定は、年々増加傾向にあります。

産業用ロボットの種類

自社の工程で、どの部分に産業用ロボットを導入できるかを検討していくためにも、産業用ロボットの種類をおさえておく必要があります。

産業用ロボットの種類は、その構造で分類すると大きく分けて2つあります。1つは、稼働するジョイントが直列に並ぶシリアルリンクタイプ。イメージとしては人の腕のように細長く、広い可動域を持ちます。もう1つは稼働するジョイントが並列に並ぶパラレルリンクタイプ。シリアルリンクタイプほど可動域は広くありませんが、人の指が連動して物体を掴むような動作が得意でピッキング工程等で利用されています。

シリアルリンクタイプはさらに多関節型と座標軸型に分けられます。よく利用されているのは多関節型の垂直多関節ロボットと水平多関節ロボット(スカラロボット)、そして座標軸型の直行型ロボット(直角座標ロボット)です。

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、人間の腕のような構造を持ち、「身体」にあたる部分から「腕」に似たパーツが伸びています。その先に「手首」や「手」のような軸を持たせ、様々な動作を行うことが可能です。メリットは動作の自由度が高く、人間の作業の代替にしやすい点です。

水平多関節ロボット(スカラロボット)

水平多関節ロボットは、水平方向の動作に特化したロボットであり、部品の押し込みなど組立工程への適性があります。垂直多関節ロボットのような自由度はありませんが、比較的操作が簡単で管理しやすく、安価な点が魅力です。

直交型ロボット(直角座標ロボット)

直交型ロボットは直線軸を直角に組み合わせたロボットで、位置決めのような操作に関する高い精度と、繰り返し作業に耐えられる耐久性を備えています。搬送や基盤の組み立てといった、回転軸が必要とされない工程で活躍します。他のタイプのロボットと組み合わせて使用されることもあります。

協働ロボット

構造による分類ではありませんが、産業用ロボットの一種として、人との共同作業を前提とした「協業ロボット」というものもあります。2013年の規制緩和により、一定の条件を満たせば80W以上の産業用ロボットを、人と同じ作業スペースに導入することができるようになったことから、協働ロボットが普及するようになりました。人と作業スペースを分ける必要がないため省スペースで導入が可能であることに加えて、人の作業ラインを代替をさせやすいため、人手不足に悩む製造現場に導入しやすいロボットと言えます。

システムインテグレーションの必要性

製造後にメーカーが出荷するロボットは、ある意味半完成品の状態です。使用できる状態にするには、ロボットを導入する目的に合わせた、より利便性・効率性の高いシステムを実現する「システムインテグレーション」を行う必要があります。身近な例では、パソコン本体OS上の各ソフトの使用方法を習得したり、データをインプットして欲しい機能を得ることが、システムインテグレーションの一種です。

産業ロボットのシステムインテグレーションでは、専門的な知識・技術が必要とされるため、一部の企業を除くほとんどの企業では、システムインテグレーションの専門家「システムインテグレーター」と協働することが不可欠となります。システムインテグレーターは産業用ロボットのシステム構築に関する様々なスキルを用いて、全体像の設計から開発、運用、保守・管理までを行います。

ロボット産業に関わるインテグレータは大きく分けて3タイプあります。1つは大手企業に多い自動機メーカー。2つ目は独自の技術を持つ装置メーカー、3つ目は顧客ごとの要望を満たす自動設備メーカー。産業ロボットの使用が多いのは3つ目のタイプで、顧客に合わせたシステムインテグレーションを行なっています。

産業用ロボットの導入手順

これまで書いてきたように、産業ロボットには様々な種類があり、また機能させるためにはインテグレーションが必要です。それらを踏まえ、自社にマッチする産業用ロボット導入するための手順を考えていきましょう。

ステップ1.導入目的(解決したい課題)を整理する

人手が不足する分の労働力をロボットで補うため、あるいは危険な工程であり人間に変わってロボットに作業させたいためなど、目的を明確にします。ここで目的を明確にしておくと、ロボットの種類や、システムインテグレーション内容の検討をする際にも、適切なものを選定できます。

ステップ2.ロボットに関する情報収集を行う

展示会やロボット製造メーカー、システムインテグレーター、商社から情報収集を行うことができます。決まった取引先がない場合には、まずは展示会で広く情報収集するとと良いでしょう。

ステップ3.導入したいロボットの要件書を作成する

ステップ1で整理した導入目的の他、スケジュール、予算、スペース等の制約等を明らかにした要件書を作成します。とくに提案してほしい内容がある場合には、その旨も記載します。

ステップ4.要件書をもとに提案を依頼する

依頼先はロボット製造メーカー、システムインテグレーター、商社のいずれに行なっても良いですが、手軽なのは日頃から付き合いのある商社や販売店に依頼することです。あるいは、導入したいロボットがある場合は、製造メーカーに問い合わせて販売代理店やシステムインテグレーターを紹介してもらうという方法もあります。いずれにしても、後々打ち合わせやシステム構築を行なう過程を想定して依頼をすると良いでしょう。

ステップ5.提案内容を確認の上、契約

システム構築に関する提案について、内容やスケジュール見積額を確認し、要件を満たすものとして納得できれば契約を行います。

ステップ6.システム構築・検収

契約通りのものができているか検収を行います。

ステップ7.運用開始

通常の運用・管理に加えて、ロボットに動作をプログラムし、教育する「ティーチング」に関して自社内で対応するかどうか検討します。初期設定や、システムの組み換え時のティーチングはシステムインテグレーターに行なってもらうことになりますが、日常的に必要となる再ティーチングについては、対応可能にしておくことが望ましいです。ただし、80w以上のロボットのティーチングには資格が必要なため、厚生労働省の定める、産業用ロボットの教示等の業務に係る特別教育を受ける必要があります。

まとめ

産業用ロボットを導入するために知っておきたい基礎知識について、ご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。製造現場を人手不足から救う産業ロボットの導入について、検討する一助となれば幸いです。


<参考>

人手不足に対する企業の動向調査(2020年4月)(帝国データバンク)

産業用ロボットとは(robot digest)

ロボット関連規格(JIS・ISO・団体規格)(一般社団法人日本ロボット工業会)

NEDOロボット白書2014(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

産業用ロボットによる自動化のメリットを解説!(工場AI・ロボット.com)

産業用ロボットの市場を解説(工場AI・ロボット.com)

パラレルリンクロボットとは?おすすめパラレルロボット製造工場5選(日本サポートシステム株式会社)

【図解】垂直多関節ロボットとは?構造とメリットを解説(日本サポートシステム株式会社)

水平多関節ロボットとは?特徴やメリット・デメリット+工場3選(日本サポートシステム株式会社)

直角座標ロボットとは?特徴やメリット・デメリット+工場3選(日本サポートシステム株式会社)

協働ロボットが必要とされる背景-1.人手不足の解消(協働ロボット.com)

協働ロボット、ロボットシステムに残された課題と未来(MONOist)

コロナ禍で導入されたサービスロボットの事例を紹介します(経済産業省)

コロナ禍におけるロボット活用事例(一般社団法人日本ロボット工業会)

ロボット活用拡大のボトルネック、ロボットインテグレーターの現実(MONOist)

SI(システムインテグレーション)とは何か。SIの現状と具体的な事例・ランキング等。(ENGINEER.CLUB)

産業用ロボット導入までの流れ(robot digest)

ロボデックス ロボット開発・活用展 – ロボットに関する全てが一堂に出展(Reed Exhibitions Japan)

ロボットの特別教育(日本ロボット工業会)