デジタル化が進む中でビジネス拡大のために欠かせない「顧客管理」。
顧客情報を管理するリストを持っていても、うまく使いこなせていない企業は少なからずあるのではないでしょうか。
顧客管理は今後自社のビジネスモデルを分析し、成長させるために不可欠なツールのひとつです。
本記事では顧客管理するにあたって何をするべきなのか、顧客との信頼関係の深め方やおすすめのアプリ・ツールを詳しくご紹介します。
顧客管理の正しいあり方や活用方法を知っていただき、自社の事業モデルを改善していきましょう。
顧客管理とは
「顧客管理」というと、取引している顧客の基本情報を管理するようなイメージを持つ人もいるかもしれません。
法人なら取引先名、事務所の住所、従業員数ややり取りしている担当者名などが該当し、対個人のビジネスなら顧客の性別、年齢、住所などが当てはまります。
しかしこれからの時代に求められる「顧客管理」はそのような単純なものではありません。
顧客情報はただ保有するだけでなく、ビジネスに活かす必要があります。
ただ情報を持っているだけでは不十分で、それらを活かして顧客との信頼関係を構築し、新たなビジネスにつなげる手段になるのです。
そのためには、顧客管理が可能なソフトを使って現状を分析しながらPDCAを回していく必要があります。
正しく顧客管理を行えば、情報が宝の持ち腐れになることを防ぎ、新たな成果を生み出すきっかけになります。
顧客「関係」管理とは
顧客管理をしてビジネスの成果をあげるためには、情報の管理だけでなく顧客との関係を管理する必要があります。
これは「顧客関係管理」ともいえますが、今後のビジネスではこの考え方が主流になるでしょう。
ビジネスは人と人とのやり取りですので、顧客の情報と一言でいっても機械的に管理できるものではありません。
たとえば、自社商品の業界のシェアが低かったとしても、大手メーカーの担当者と深い関係を築いて大型案件が成約することも考えられます。
しかし、このような関係が属人化してしまうことは自社にとって大きなリスクです。
担当者がやめてしまったら信頼関係がなくなり、継続発注してもらえなくなる可能性はゼロではありません。
このような状況を防ぐためには、CRMなどのツールを使用して顧客との関係を管理し、ビジネスを順調に進めるためにリスクヘッジする必要があるのです。
顧客との信頼を深める方法
ではどのように顧客との信頼を深めればいいのか、3つの観点から見てみましょう。
顧客の基本情報を知る
まず前提として、顧客の基本情報を知らなくては関係を構築できません。
個人なら性別、居住地や購買傾向などのデータを、法人なら従業員数、事業所の場所、展開しているビジネスの内容などが該当します。
相手のことを調べずにニーズを聞き出すことは不可能なので、まずは基本的なことを頭に入れておく必要があるでしょう。
顧客とやり取りする時間を作る
次に、顧客とやり取りする時間をできるだけ多く割くことも大切です。
とある実験では、営業のスタッフが顧客とやり取りする時間が長いほど、受注率は高くなるという結果が出ています。
心理学の研究では、接触する時間が長ければ相手が自分へ好意を持ちやすいともいわれています。
多くの時間を過ごすことで、相手への理解を深めてニーズをヒアリングすることはもちろん、人間関係も構築しやすくなります。
さらに、商品の成約後もアフターフォローを忘れずにやり取りを続けることで、長期にわたって強固な関係を築くことができるでしょう。
顧客のニーズをくみ取り課題を解決する
顧客と信頼関係を構築するためにもっとも大切なのは、相手のニーズを汲み取って課題を解決することです。
そのためには顧客の心理に寄り添い、同じ目線に立って考えることが必要です。
たとえば、新しい法律が出るとともに、新たなツールを導入する必要があり、2社から営業があったとします。
A社は「新しいツールを入れれば法律に対応できます」といい、B社は「新しいツールを入れれば法律に対応できます。ただ、ツールを入れるとこれまでの営業活動に支障が出るという懸念もあると思います。そこでこのような仕様を含めた商品をご提供します」と言っています。
このどちらかなら、後者を選ぶ人が多いのではないでしょうか。
顧客のニーズを汲み取り一緒に課題を解決することはビジネスでは当たり前の考え方ですが、実現するのはなかなか難しいものです。
成果を出すためには、ただ顧客の情報を持っているだけでは不十分で、より多くの時間を過ごし、相手の潜在的なニーズをヒアリングする必要があります。
顧客管理システムはエクセルで自作できるのか
顧客管理をするにあたって、システムを自作できるかという疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
中には「エクセルを使えば十分」と考えている人もいるかもしれません。
たしかにエクセルはデータを一括管理するのに適したツールですが、顧客管理という視点で考えるといくつかデメリットがあります。
エクセルが使いにくい理由を4つの点から解説します。
エクセルは同時編集ができない
エクセルを顧客管理に使うデメリットの一つ目は、同時編集ができないことです。
顧客管理は一人だけでするものではありませんので、複数人が編集しても支障がないようにすることが必要になります。
特に営業部門で使う顧客管理システムなら、営業メンバーが商談後すぐに入力できるよう、複数人が使える仕様にすることが必須です。
エクセルのリストは同時編集すると破損する可能性がありますし、複数のデータが生まれて最新のファイルがわからなくなる可能性があります。
エクセルはデータがなくなる可能性がある
エクセルは共有フォルダなどで管理することになると思いますが、誤ってデータを消してしまったり、ファイルそのものを削除してしまったりする可能性があります。
膨大な顧客情報を記載した貴重なデータがなくなってしまうことは、企業にとって大きな損失です。
エクセルは分析機能がない
顧客管理システムをおすすめしない理由の3つ目は分析機能がないことです。
顧客の情報をビジネスに活用するためには、現状を分析して次に活かさなくてはいけません。
しかしエクセルの情報を一覧で持っているだけでは分析することは困難です。
最近ではAI機能を搭載した分析機能もありますので、自分たちで分析をしなくても自動的に次のアクションを抽出してくれるようなツールがあります。
エクセルはモバイル端末から使いにくい
エクセルはモバイル端末から使いにくいというデメリットもあります。
忙しいビジネスマンが顧客管理ツールを使うのなら、いつどこにいてもデータを編集できるようにしておくことは必須条件です。
モバイル用のエクセルアプリもありますが、フォントが小さく使いづらいことが懸念されますので、モバイルアプリに対応した顧客管理ソフトのほうがおすすめです。
顧客管理におすすめのソフト「CRM」
本格的に顧客管理をするなら、エクセルよりもCRMを使うことをおすすめします。
CRMは“Customer Relationship Management”の略で、まさに顧客との関係管理を目的としたツールです。
なるべくコストをかけずにエクセルなどを使いたい気持ちはあると思いますが、長い目で見るとCRMのほうが成果を出しやすいのです。
CRMを使うメリットについて詳しく見てみましょう。
情報を共有しやすい
CRMは情報を共有しやすいことがひとつのメリットです。
モバイルアプリに情報を入力すれば、CRMを使えるメンバーがすぐにアクセスでき、リアルタイムで状況を知られます。
これは部門同士の共有も可能で、即座に情報が反映されるので会議の資料として使うことも可能です。
効率よく分析できる
CRMを使うと効率よく顧客との関係を分析できます。
案件の受注や取引状況をステータス別に閲覧できるため、マーケティングの戦略立案に役立てられます。
さらに機能が充実したCRMであればAIを使った分析も可能ですので、効率化しながら次のビジネスモデルを考えられるでしょう。
顧客と深い関係を構築できる
CRMを使うと、これまでのやり取りの内容を共有して、より深い関係を構築することが可能です。
すでに深い関係を築いた営業のメンバーがいるのなら、顧客の中でも重要な担当者とのやり取りの内容や性格など、事細かに記しておくといいでしょう。
また今までのビジネス内容やノウハウも蓄積できるので、新たなサービスの提案など営業活動に活かすこともできます。
属人化しにくい
CRMを使うと顧客管理が属人化しにくくなります。
まったく顧客管理をしていない状態だと、もちろん一人の担当者しか事情を知らない状況に陥ってしまうでしょう。
CRMで日々の商談のやり取りや人間関係を記録しておけば、担当者に何かあったときでも他のスタッフに引き継ぎ、スムーズにやり取りを進めることが可能です。
顧客管理ツールを選ぶポイント
ここからは顧客管理ツールを選ぶ際のポイントを紹介します。
これからCRMを導入しようとされている方は、以下の3つの点を基準にサービスを探してみてください。
操作のしやすさ
最初に確認したいのは操作しやすいことです。
せっかくCRMを導入しても、操作がしにくいと情報を入力することが嫌になってしまいます。
最近では感覚で操作できるような見た目のツールもありますので、初見でも使いやすいと感じられるツールを選ぶといいでしょう。
またアプリ版があるとスマートフォンからでも使えるため、パソコンとスマートフォンのどちらからも操作しやすいことを見てみることをおすすめします。
機能の多さ
次に確認したいのは機能の多さです。
CRMを使うなら顧客の情報をフィルタリングできる機能やCSVの出力機能、レスポンシブ機能など、最低限必要な機能を洗い出してからサービスを決めましょう。
中にはマーケティング施策を立案できるようなCRMもありますが、高機能なものは比較的価格が高くなるので、予算におさまる範囲内で自社の丈に合ったツールを選ぶことが大切です。
予算におさまるかどうか
CRMはサブスクリプション型のサービスが多く、機能性が高いものならある程度のコストがかかります。
あくまでも予算におさまる範囲ないで、オーバースペックにならない程度の機能性を持ったソフトを選ぶことをおすすめします。
CRMの効果がどれほど出るかわからない場合は、まず無料版のアプリやソフトの使用から試して、成果が出たら有料版に移行することもひとつの手段です。
おすすめの顧客管理ツール【無料版】
これから顧客管理ツールを使用される方向けに、無料版と有料版のおすすめソフト・アプリをまとめました。
Fullfree
出典:Fullfree
Fullfree(フルフリー)は無料でダウンロードできる顧客管理ツールです。
使用期限を設けておらず、永年無料で使えるのでコストを抑えたいときにぴったりです。
サーバー不要でクラウド上のデータ共有ができ、さらに項目のカスタマイズなどもできるため、まずは無料版から試してみたい人におすすめのツールといえます。
HubSpot
出典:Hubspot
Hubspot(ハブスポット)はマーケティングやセールスなどに特化した無料のCRMツールです。
世界で12万社以上の利用実績があり、グローバルで使われている知名度の高いCRMでもあります。
無料から有料版にアップグレードすることも可能なので、まずは試してみて成果が出たら有料版のデモに切り替えてみてもよいでしょう。
Ambassador Relations Tool
Ambassador Relations Toolは(アンバサダーリレーションツール)CRMやマーケティングオートメーションなどを支援する活用ツールです。
CRMは顧客の基本情報だけでなく商談のやり取り内容などを記録でき、営業状況を分析してPDCAを回せる仕組みが整っています。
フリープランは初期費用、月額費用どちらも0円で利用できます。
おすすめの顧客管理ツール【有料版】
次は有料版のおすすめ顧客管理ツールをまとめました。
予算に余裕がある場合は、以下の3つの中から検討してみてください。
Salesforce
出典:Salesforce
Salesforce(セールスフォース)はCRMの中でもトップクラスのシェアを誇るツールです。
世界でも多くの企業で利用されており、機能性の充実度や実績に定評があります。
営業状況や顧客のデータをダッシュボードで簡単に閲覧し、現状の分析に活かすことが可能です。
またそれぞれの項目を企業ごとにカスタマイズできるので、自社に合った形式のレポートを作成できます。
Kintone
出典:Kintone
Kintone(キントーン)は使いやすさやデザインに定評があるCRMです。
見やすいデザインと親しみやすい仕様が強みのひとつで、マニュアルを見なくても初見で利用できることが大きなメリットといえます。
また分析機能も豊富についているため、すぐに情報を入力してスピード感を持ってPDCAを回したい人におすすめです。
やよいの顧客管理
出典:やよいの顧客管理
やよいの顧客管理は、会計ソフトのやよいシリーズから派生したCRMです。
他のソフトと併せて高いシェアを持っており、ブランドの信頼感があることがひとつのメリットです。
バックアップ機能があるベーシックプランや、電話やメールのサポートサービスが付いたグレードの高いプランなど豊富なシリーズを展開しています。
まとめ
今回は顧客管理をする際のポイントやおすすめのツール、使用するメリットを紹介しました。
顧客管理はおざなりにしている企業が多い事柄ですが、きちんと現状を分析して改善すれば大きな成果につなげられる手段です。
ぜひ今回紹介したツールを活用いただいて、効率化しながら成果を出すための取り組みを始めてみてください。