近年では派遣、格差、長時間労働などが問題視され様々なメディアでニュースとして取り上げられてきました。その中でも「働き方改革」という言葉が扱われることが増えており、日本の労働状況を大きく変えつつあります。
今回の記事では働き方改革の詳細、目的などをまとめて解説します。今後の課題や副業への影響などについてもご紹介しているので、合わせてご参考にしてください。
働き方改革とは
働き方改革は、「少子高齢化による生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立の影響を受けた働き方のニーズの多様化」「雇用形態による格差の是正」に対応するために生まれた新たな考え方です。
「一億総活躍社会を実現するための改革」とも言われており、特に生産年齢人口への対策は急務となっています。
2051年の生産年齢人口は5000万人を割ると予想されており、国内の生産力低下に繋がりかねません。そのため、国内では様々な取り組みが行われているのが現状です。
出典:日本の将来推計人口
働き方改革によって変わったポイント
働き方改革が施行され、変わったポイントの代表例として下記の4つが挙げられます。
- 時間外労働の見直し:以前は上限規制はなかったが、年間720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間という制限が設けられるようになった。
- 年次有給取得の義務化:有給休暇が年10日以上ある労働者は、そのうち5日の取得が企業に対して義務付けられる。
- フレックスタイム制の清算期間に対する見直し:フレックスタイム制の清算期間が1ヵ月から3ヶ月に延長
- 同一労働同一賃金の義務化:正社員と派遣労働者、非正規労働者の待遇に対する是正、理由の説明の義務化が義務付けられるようになった。
参照:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案
いずれも2019年4月から大企業で施行され、その後も段階的に中小企業においても取り組みが行われるようになりました。
働き方改革の目的とは
働き方改革の目的としては「長時間労働の見直し」「雇用形態による格差の是正」など様々です。いずれも労働者のメリットに繋がるものとなっています。ここからは働き方改革のそれぞれの目的について詳しくご紹介するので、ご参考にしてください。
長時間労働の見直し
時間外労働に対して年間720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間という上限が設定され、労働者の負担を軽減するように改善が行われました。企業での長時間労働は社会でも大きく問題視されており、労働者を守るための対策になっています。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも超えることはできない制約となっており、ルールの大きな改定に繋がりました。
雇用形態にかかわらない公平性の実現
正規と非正規雇用者に関する格差を減らすために「雇用形態にかかわらない公平性の実現」に対する取り組みが行われています。どの雇用形態でも納得できる待遇が受けられるように、労働者が多様な働き方ができるようになりつつあるのが現状です。
待遇そのものだけではなく、待遇に関する説明義務の強化も目的として取り組みがなされています。非正規雇用者は待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることが可能となり、以前より双方で話しやすく、納得できる環境が実現できるようになりました。
ダイバーシティの推進
ダイバーシティ(Diversity)とは日本語で「多様性」という意味を表し、国内でも多様な事情を抱えた労働者への配慮がなされるようになりました。女性が活躍できる環境整備を整えたり、子育て・介護と仕事が両立できるようにしたりと対策が行われています。
障害者就労の推進や外国人労働者の受け入れなども積極的に行われており、現在でも改善の施策が実施されています。
ハラスメント防止対策
近年、世界的にハラスメントを防止しようという取り組みがなされており、国内でもその動きが活発になっています。セクハラ、モラハラ、パワハラなどの撲滅がいずれの職場でも義務付けられるようになりました。
ハラスメント対策は事業主の義務となり、相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備する必要があります。その結果、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための対策や、ハラスメント防止に関する講習なども行われるようになりました。
働き方改革における今後の課題
働き方改革では様々な目標が設定されていますが、課題は多く残されています。中には目標となりつつもまだまだ改善されていない問題点もあり、現在でも改善に対する取り組みが続いているのが現状です。
ここからは今後の課題についてご紹介するので、働き方改革への理解を深める際のヒントにしてください。
テレワークなどの導入の安定化
コロナ禍の対策の一環としてテレワークの導入が行われてきました。実際にテレワークを導入することによって、会社に出勤せずとも働ける環境が構築できるようになり、働き方の1つとして定着しつつあるのが現状です。
出勤を減らせるので在宅勤務の推進に繋がり、身体に障害がある労働者、妊娠している労働者などの負担を軽減できるというメリットもあります。業界によってはテレワークの方が業務効率が高まる企業もあり、今後もテレワークは働き方の1つとして採用され続けるでしょう。
ただ、企業によっては十分なリソースが無く、テレワーク体制を導入できないと言う企業もあり、今後も課題の1つとして取り組むべき問題になっています。
残業代の削減に関する問題
長時間労働に関する是正が行われるようになりましたが、同時に残業代の削減に繋がるというデメリットもあります。本来得られるはずだった残業代が減少するため、所得の低下になり、問題視されている面があるのも事実です。
国内の企業では副業を禁止している企業も多いことから、労働者の収入低下を改善できていない部分が多く残っています。そのため、企業では新たな手当や賞与なども対策の1つとして考える必要があります。
他にも福利厚生の充実など収入面以外でのサポートなど、様々な解決策が今日でも多くの企業で実践されています。
実質的な労働量が減っていない
働き方改革により、残業時間の上限が決まり、労働者への負担軽減へと繋がるようになりましたが、それでも実質的な労働量が減った訳ではありません。残業時間が削られても、働く量が変わらず、その結果サービス残業や仕事の持ち帰りが行われる可能性が問題視されています。
また、業務時間内で全て終わらせる必要が出てしまい、より一層普段の仕事がハードになるなど、根本的な解決に繋がっていない可能性も考えられます。
労働者への負担を減らすためにもマネージメントの管理、システムを使った業務効率の改善などが依然として課題として残っているのが現状となります。
中小企業・小規模事業者に対する支援はあるのか
働き方改革では中小企業・小規模事業者に対しても支援策が組まれており、人手不足、人材の活躍や定着に関するサポートが行われています。年5日の年次有給休暇の確実な取得や割増賃金率の引き上げなども行われ、以前よりも働きやすい環境になっています。
また、生産性向上に関するITツールの導入、サービス開発などに関する設備投資へのサポートなども行われています。制度やサポートを充実させることによって、以前よりもより働きやすい環境構築を実現へと改善されつつあると言えるでしょう。
副業などにも影響がある
働き方改革では政府によって副業に関するガイドラインも組まれており、年々増えつつある副業に関する事項について言及されています。ただ、企業によっては全面的に副業を禁止しているところもあるのが現状です。
一方で「副業を禁止するのに合理的な理由」がない場合は、副業を禁止する規則が認められない可能性があります。不許可事由を具体的に表し、「許可制」へと変更することが求められており、以前よりも副業しやすい世の中になりつつあるという考え方もできます。
副業をしないと生活できないという労働者も存在することが考えられており、こちらも働き方改革の課題の1つとして考えるべきポイントになっています。
まとめ
今回の記事では働き方改革に関する概要、目標や今後の課題について詳しくご紹介しました。ポイントを押さえた解説となっており、今回の記事を読むだけで働き方改革の内容を把握しやすくなるでしょう。
働き方改革は既に実施されており、実際に国内の企業の多くの問題を解決しています。ただ、まだまだ改善すべきポイントは多く残っているのが現状です。これからも様々な取り組みが行われることが予想されるため、変更点が出た場合は細かくチェックしましょう。