「エンゲージメント」という言葉の正しい意味を知っていますか?
エンゲージメントは顧客満足度や従業員との関係を測るために使われる用語であり、高めるための方法を正しく実践すれば企業全体で生産性や成果の向上が見込めます。
今回はエンゲージメントの意味や高めるための方法、またその際の注意点について詳しくまとめました。
エンゲージメントの意味
エンゲージメントは英語で“Engagement”といい、婚約、約束、契約といった意味を持ちます。
より具体的にいうと、ビジネスの場では「従業員や顧客と企業の関係性」を指す言葉です。
従業員や顧客が自社に対して持つ愛着や思いやり、と言い換えてもいいでしょう。
似た言葉に「ロイヤリティ」がありますが、これは忠誠心という意味が強く、どちらかというと主従関係に近いイメージがあります。
また「従業員・顧客満足度」は待遇や評価に対して使われる言葉であり、エンゲージメントはこれらを含めた広義の意味を持ちます。
次章から、具体的にどのようなことがエンゲージメントにつながるのか詳しく解説していきます。
従業員のエンゲージメント
エンゲージメントという言葉でまず紐づけやすいのは「従業員の自社に対するエンゲージメント」です。
この場合は愛着や思いやりなど、「この企業で働き、貢献したいと思う気持ち」を指します。
従業員のエンゲージメントは主に以下の3つで構成されます。
- 理念への共感:社風やビジョンに共感して仕事に取り組める
- 働きやすさ:条件面や待遇、社内の風通しがいいと感じる
- やりがい:従業員が仕事を通じて自己実現できる
従業員と自社のエンゲージメントの理想的な形は、企業が従業員に対して満足度の高い仕事の場を提供し、従業員が企業に貢献したいと思うことです。
そのためには働きやすい環境を作ったり、制度を変えたりするなど、コミュニケーションを取りながら現状を改善していく必要があります。
顧客のエンゲージメント
もうひとつのエンゲージメントは「顧客と企業の関係性」です。
顧客の自社に対するエンゲージメントが高ければ、いいイメージを持ってもらい、商品を買ってもらいやすくなります。
顧客のエンゲージメントは、以下の項目を満たすと高まりやすくなります。
- 実績による安心感:業界でトップシェアを取るなど
- サービスや対応の品質:カスタマーサービスの対応の良さ、商品をリピートしたくなるか
- 提供できる価値が明確:商品を使うとどんなメリットがあるかわかる
顧客のエンゲージメントは、単純に価格を下げて安く売れば上がるものではありません。
自社が積みあげてきた実績と誠実なやり取り、さらに商品を買うことによって得られる価値がわかってはじめてエンゲージメントが高まるといえるでしょう。
エンゲージメントが重要視される理由
エンゲージメントの意味がわかってきたところで、なぜここまでエンゲージメントが重要視されるのか、その背景についてお伝えします。
ひとつの要因は「会社の在り方が変わってきたこと」です。
成果主義の風潮による採用の難しさ
従来日本の企業は年功序列形式でしたが、経済の縮小により成果主義の風潮に変化しています。
それまでひとつの企業に勤めあげることが当たり前でしたが、今ではより良い制度や条件を求めて転職することが当たり前となったのです。
これに伴い、企業にとって採用のハードルが高くなり、その解決の手段として台頭したキーワードが「エンゲージメント」です。
優秀な人材は「さらにレベルアップして、制度や条件もいい場所で働きたい」と思って転職する世の中になりました。
そのような要望に応えるためには従業員にとって「ここなら自分のやりたいことを実現できる」と思ってもらう必要があります。
商品を選ぶ基準が厳しくなっている
また経済の縮小に伴い、顧客が商品を選ぶ基準も厳しくなっています。
高度経済成長後の物があふれる時代では「品質が高いもの」が手に入るのは当たり前となったのです。
そのため「どのような価値が提供できるか・どんな体験ができるか」といったこともエンゲージメントを高めるきっかけとなっています。
エンゲージメントを高めるメリット
ここからはエンゲージメントを高めるとどうなるのか、企業が得られるメリットをまとめました。
従業員という観点では人材の確保や離職率の低下、顧客の観点では購入率の向上などが挙げられます。
従業員のエンゲージメントを高めるメリット
従業員のエンゲージメントを高めると、以下の3つのメリットが見込めます。
優秀な人材を確保しやすい
社内の雰囲気がよくなったり、待遇面を改善したりすると優秀な人材を確保しやすくなります。
外部から転職してくる人にとっても条件面のメリットがありますし、既に働いている従業員の満足度が高くなるでしょう。
離職率が低下する
エンゲージメントの高さは離職率の低下につながります。
たとえばテレワークを積極的に実施すれば、子育てをしている従業員や遠方に住んでいる従業員にとって働きやすさが向上します。
離職率の低下は企業にとってもいいことですので、採用活動においてもアピールできるポイントになるでしょう。
生産性向上につながる
従業員のエンゲージメントが高まると、働くモチベーションが高まるので生産性の向上が期待できます。
仕事を通して自己実現できるようという気持ちがあれば、より効率を上げてさらなる成果を出すために従業員一人一人が工夫してくれるはずです。
顧客のエンゲージメントを高めるメリット
顧客のエンゲージメントを高めると購入や売上につながることの他、改善の要望をもらいやすくなるメリットがあります。
購入につながりやすい
顧客のエンゲージメントを高めると、言わずもがな商品の購入やリピートにつながりやすくなります。
万が一エンゲージメントが低い場合、購入してもすぐに解約されてしまい、継続依頼をもらうことは難しいでしょう。
購入率や解約率などの数字は専用のツールを使えば分析できますので、日頃から記録して定期的に改善を試みると効果が出てきます。
改善要望をもらいやすくなる
エンゲージメントが高い顧客からは、商品や日頃のやり取りに対する改善要望をもらえるメリットがあります。
関係値があるからこそ、これまでの現状や課題を見て忌憚ない意見を言ってくれる人がいるはずです。
こうした言葉を真摯に受け止めて改善することで、企業全体として成長できるでしょう。
エンゲージメントを高める方法
次は従業員・顧客ごとにエンゲージメントを高める具体的な方法を10個紹介します。
できることから取り組んでいただき、自社の成果につなげていただければと思います。
従業員のエンゲージメントを高める方法
従業員のエンゲージメントを高めるにはまず声を聞いて現状を知ること。
また企業理念の浸透や働きやすい環境づくりに注力することが大切です。
それぞれのポイントを深堀していきます。
従業員の声を聞く
まずは従業員が現状に対してどう思っているのか、率直な意見をヒアリングする必要があります。
働きやすさや条件面、周りとのコミュニケーションの取りやすさ、仕事に対するやりがいなどアンケート形式で回答を募るといいでしょう。
さらに管理職のメンバーが個別に面談し、要望があれば詳しくヒアリングするとより精度の高い意見を聞けるようになります。
まずは現状を分析し、次にどのようなアクションを取るべきか戦略を練るための情報を集めることが重要です。
企業理念の浸透
次に企業理念を浸透させることも欠かせません。
エンゲージメントで大切なのは「従業員と企業がお互いに刺激しあい、成長できること」です。
これを達成するためには、まず企業の理念に共感してもらう必要があります。
そのためには、たびたび理念に立ち返って企業が活動する目的を見直さなくてはいけません。
定期的にトップからのメッセージを発信して、社員に理念を理解してもらう努力を重ねましょう。
条件・待遇面の見直し
3つ目のエンゲージメントを高める方法は条件・待遇面の見直しをすることです。
これは簡単にできることではありませんが、一時的にインセンティブ制度を設けてどのような反響があるか実験してみることもひとつの手です。
たとえば営業部門であれば半期の成績を通して、売上成績がよかったチームにインセンティブを渡す、といったことも従業員のモチベーションアップになるでしょう。
そういった試みを重ねて、効果が出た取り組みを中長期で行うこともエンゲージメントの向上につながるかもしれません。
働きやすい環境づくり
エンゲージメントを高めるためには、従業員にとって働きやすいと感じられる環境づくりも必要です。
女性の育休・産休の実績や残業時間など、他の企業に比べて足りない部分がないか今一度見直してみましょう。
またここ近年では感染症対策として、テレワークができるかどうかも企業を見る際のポイントになっています。
こうした働く環境を改善することで、外部から人材が集まりやすくなるというメリットもあります。
コミュニケーションの活性化
コミュニケーションの活性化も、エンゲージメントを向上させる手段として有効です。
従業員同士の風通しがよければ、組織としてコミュニケーションが活発になり仕事をしやすくなります。
コミュニケーションを活性化させるためには日頃からチームミーティングをこまめに行ったり、個人面談をしたりしてお互いへの理解を深めることが大切です。
教育制度の充実化
外部研修実施など、教育制度を充実化させることも、従業員にとってはエンゲージメントを高めるきっかけになります。
部門に応じてプログラムを変えたり、「1年に2つ以上受ける」など推奨基準を設けたりすることで、従業員のスキルアップにつながり、ひいてはパフォーマンス向上になるでしょう。
モチベーション向上のきっかけを作る
エンゲージメントを高めるには、従業員のモチベーションをキープすることも必要です。
たとえば年に1度優秀な社員を表彰したり、各部門でコンペをひらいたりすることが挙げられます。
改めて評価の場を設けることで気が引き締まり、仕事に対するモチベーションの向上が期待できます。
顧客のエンゲージメントを高める方法
顧客のエンゲージメントを高める方法は、こまめなコミュニケーションやお客様アンケートの実施がおすすめです。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
こまめなコミュニケーション
ひとつ目に大切なのはこまめなコミュニケーションです。
顧客と関係を築くには、日頃から顔を合わせて話す時間を作ることが欠かせません。
営業の現場でも、顧客と会う時間が長くなるほど商品の購入につながる可能性が高くなるといわれています。
お客様アンケートの実施
ふたつ目に、従業員と同様に顧客に対して現状のアンケートを取ることをおすすめします。
年に一度「お客様アンケート」と題して、自社製品や従業員のサービス、今後の継続の意思など率直な意見を聞くようにしましょう。
5から10ほどの数値を設けて定点観測できるようにすると、年ごとによる変化がわかりそのときにやるべきことがわかりやすくなります。
感謝会などイベントの主催
三つ目に、感謝会などイベントを主催することも効果が期待できます。
目に見える形でゲストとして招待し、日頃の感謝を伝える場を設けると相手の印象にも残りますし、愛着を持ってもらえる可能性が高まるでしょう。
多少の予算はかかりますが、あえてこのようなイベントを開催することでエンゲージメントの向上が期待できます。
エンゲージメントを高める際の注意点
エンゲージメントを高める際には、現場からの不満の声がくることや、全てに対処しきれないといった点に注意しなくてはいけません。
2つの注意点について詳しく見てみましょう。
現場から不満の声が上がる
現状を測るために従業員にアンケートを取ると、必ずといっていいほど不満の声が上がります。
しかし不満を言うだけなら誰でもできるので、これを発信するだけでは生産性の向上にはつながりにくいでしょう。
このため意見をもらう際には、不満だけでなくあわせてどのように改善すればいいか。
その不満を解決して得られる成果も出してもらうよう、あらかじめアンケート依頼時に書いておくことをおすすめします。
優先順位を決める
現状を分析すると対処しなければいけない項目がたくさん出てくるため、優先順位を決めることが大切です。
たとえば人事制度を抜本的に見直すのは時間と予算がかかりますが、週に一度ミーティングの場を設けて従業員同士でコミュニケ―ションを取ることはできるでしょう。
そして、コミュニケーションの場を設けて風通しがよくなれば、長期的にエンゲージメントの向上につながります。
分析が終わったあとは、見込める成果が大きいものから取り組み、優先順位をつけてから対応策に着手してみてください。
まとめ
今回はエンゲージメントという言葉の意味や、企業においてエンゲージメントを高める方法、その際の注意点などを解説しました。
エンゲージメントは企業が従業員や顧客と関係を構築するために役立つ考え方であり、さまざまな施策を取ることで生産性向上が期待できます。
ぜひ今回紹介したコツを実践いただき、エンゲージメントの向上に取り組んでみてください。