「66.5%」。
この数字は、後継者不在だと感じている国内企業の割合です。(帝国データバンクが2017年に行った調査参照)この数字を見れば一目瞭然かもしれませんがなんと約7割の企業が後継者不足に悩んでいます。
また、HR総研が2019年に行った調査によると、リーダー育成研修を実施している企業は41%となっています。このことから多くの企業が後継者不足に悩み、研修を実施しているということが分かります。
本記事では企業の成長や、後継者不足での廃業を防ぐために重要な次世代リーダ育成について中小企業が何をすればいいのか?をご紹介します。
この記事を読み、「後継者候補がいない」「事業を率先して引っ張ってくれるリーダーがいない」と悩んでいる方はぜひご覧いただき、次世代リーダー育成に関して何か学びがあれば幸いです。
次世代リーダーがいない企業が多い背景
初めに、次世代リーダーがいない理由は
①リーダー育成に対する考え方
②人的、教育ノウハウリソースの不足
③社内教育はバイアスがかかる
この3つが次世代リーダーがいない企業が多い理由だと思います。
それぞれご説明させていただきます。
①リーダー育成に対する考え方
おそらく、多くの企業が採用活動を行う最も大きな理由は次世代リーダーを獲得することだと思います。この次世代リーダーとは「企業の次世代を担う経営幹部や将来の経営者候補」と定義されていますが、もう少し噛み砕いてみると
【次世代リーダーとは」
・主体的に自社の成長に繋がるアクションをしてくれる
・個人ではなくチーム視点で物事を考え行動する
・部下の育成などマネジメント力がある
など、本来経営者が行う業務を主体的に行ってくれるような人のことだと思います。
しかし、このような人材は滅多に採用できないことが多いと思います。
そのため、「採用した人材が仕事を通して成長し偶然生まれるのを待つ」という意識で次世代リーダーが採用した人の中から出たらいいなという考えの企業が多いように思います。
しかし、「VUCA(Volatility=激動、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=不透明性)」といわれる今の時代、変化・変革をリードできる人材が偶然に生まれ出てくることはまれでしょう。
今は、守りではなく攻めの姿勢でリーダーとなりうる人材を「作り込む」ことが必要になります。実際HR総研(ProFuture株式会社)が上場および未上場企業人事責任者・担当者169社に行った調査によると、リーダーシップ研修の実施について、4割以上の企業がリーダーシップ研修を行っていることが分かります。
全体企業の半数以上が行っているように時代は、リーダーとなりうる人材を育成する時代です。
そのため、後継者やリーダーとなる人材がいないと思う企業は、採用で補おうとしたり、必然的に育ってくると思うのではなくどうやって後継者となる人材を育成するか?という考え方に切り替える必要があると思います。
②人的、教育ノウハウリソースの不足
しかし、リーダーは育ってくれるのを待つのではなく育てる必要があるということを理解しても
教育をしてくれる人がいない、育成ノウハウがないというリソース不足の問題があると思います。
人的リソース不足は、リーダーを教育する人がいないということです。そもそも、リーダーの育成には様々な角度からの教育が必要です。また、現場の業務や考え方を知るという意味でリーダークラスからの教育が必要なケースも多く、教育コストが非常にかかります。また、研修などを行う際は継続して長期的に行う必要があることから人的リソースが多く必要となります。
教育ノウハウも若干人的リソース不足と似ていますが、リーダー育成に必要な人がいても何をどう教えればいいのか分からないという問題です。リーダーになるためには何を教えたら期待するリーダー像に育つのか?その社内知識リソースも必要になります。
③社内教育はバイアスがかかる
もし仮に、リーダー育成担当がいたり、社内での教育リソースがある場合でも気をつける必要があるのが、社内教育はバイアスがかかってしまうことです。教える人が社内の人材である以上、その教育内容は社内の歴史や特性に沿ったものになります。社内での経験では教育できる内容に限界があります。そのため、これまでの成功体験に依存してしまう可能性があります。また、社内の人からのリーダー育成は、素直に受け取れないケースもあり、教わったはいいものの実践しない可能性や無理矢理やらされている感が残り本当の成長に繋がらない可能性もあります。
以上の3点から、今は外部の教育のプロを読んでみたり、研修に参加したりと外部の人に教育してもらうことが増えています。
次世代リーダー育成で経営者が抱えている最重要課題
次に、次世代リーダーの育成の経営者が抱えている最重要課題をご紹介します。これは、実際に次世代リーダーになりうる候補者がいる場合に経営者が考える課題です。
その課題は、リーダー向け研修の内容を見ると分かってきます。HR総研の調査の人材育成「テーマ別研修」に関する調査報告1を見ると、研修内容の上位は
1.リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識
2.部下育成力
3.組織を牽引する力
だということが分かります。
この結果を見ると、実際に部下を牽引してまとめていく、組織を牽引するなど、具体的なアクションに対するサポートスキルよりも、マインドセットに関するものが約6割を超えていることが分かります。
この内容から推測するに、多くの経営者はまずはリーダーとしての意識を持って欲しい。考え方を学んで欲しいというように候補者はある程度いるがまだその候補者はマインドがリーダーではなく、プレイヤー思考で働いているということが分かります。
つまり、次世代リーダーの候補者はいるが、マインドセットがまだプレイヤー視点の候補者が多いという課題があると思います。
最重要課題を解決するためには
では、候補者のマインドセットを経営者視点、つまり後継者や事業運営を任せられる次世代リーダークラスに育てるには何をすればいいのでしょうか?
様々な書籍やWebサイトを見ればリーダーとしてマインドを切り替えるきっかけになりうるテクニックや情報がたくさん掲載されていますが、ここではその小手先のテクニックよりもより本質的な手段をご紹介しようと思います。
それは
自社のビジョンや商材に共感し、世の中に普及させたいと本人が思っているか?
を確認することだと思います。
この基礎となる本人の意思があって初めて研修などの教育があると思っており、本人がこの意思がない状態で教育を行っても逆効果になる可能性もあります。
そのため、大前提として自社の商材やビジョンに共感し組織をともに大きくしていきたいと思う人を採用する必要があります。また、すでに採用をしている候補となるリーダー候補への教育を行う際は、自社のビジョンや商材によって解決する課題についてより説明する必要があると思います。
これにより、本人が共感して初めて教育を行うべきだと思います。
1つ例を持って紹介すると、エン・ジャパン株式会社では「主観正義性」という名でこの考え方を従業員に徹底しています。主観正義性とは自社の商材の特徴や機能に納得した上で扱うというマインドです。
エン・ジャパン株式会社が扱う「エン転職」という媒体は、第3者の口コミ評価が求人情報に掲載され転職者と企業のミスマッチを減らし、採用ではなく採用後の活躍を支援するという採用媒体になっています。
つまり、この媒体を扱うことで社員はこの媒体により転職者は人生を豊かにできる。そして企業はミスマッチなく入社した人材が活躍する可能性が高いというWinWinだということを社員に伝えています。
そのため、従業員が自社の商材に納得し自ら動く環境ができ、次世代リーダー候補の基礎が出来上がると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事を要約すると
①次世代リーダーとなる候補者がいない企業が多い背景には3つの問題があること
②上述した課題を解決したとしても候補者はまだマインドセットができていない状態のことが多い
③次世代リーダーになってもらうには、まず自社のビジョンや商材への共感をしてもらうことが重要
という内容です。
後継者や事業を引っ張っていってくれるリーダーとなると、早く成長して欲しいという気持ちが一方的に強くなってしまいがちですが、まずは自社のビジョンや商材に対して共感し共に成長したいとリーダー候補が感じてくれているのか?をすり合わせる重要性をご理解いただけると幸いです。
自社に共感して初めて研修や教育を始めることが最短で次世代リーダーを見つける方法なのかもしれません。
<参考>
HR総研(ProFuture株式会社):「HR総研 人事白書2016」人材育成に関する調査結果【5】 リーダーシップ研修
HR総研(ProFuture株式会社):HR総研:人材育成「テーマ別研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)
株式会社ラーニングエージェンシー:次世代リーダーの育成方法とは?求められる条件と計画~実施までの7ステップ