企業の広報担当者の方、自社の広告で商品をどのようにアピールすればいいか悩んでいるという方はいませんか?
まずは、この広告をご覧ください。
「もう どう広告したらいいのか わからないので。」というこの広告。
コロナ禍で先が読めない中で想定される様々な「シーン」を、「K」「I」「N」「C」「H」「O」というそれぞれの頭文字から始まる言葉で表現しています。そして、それぞれの状況の右側にQRコードを配置し、「このシーンならこのQRコード先を見て!」と誘導しています。
試しに「K-Type 緊急事態・外出自粛などが、まだ継続している場合。」のQRコードを読み込んでみると、「いまだから、やろう!在宅殺虫!」というメッセージとともに同社の商品「ゴキブリムエンダー」のPRが。他の頭文字のページも、同様にシーンごとに、「こんな時こそゴキブリ退治⇒ゴキブリムエンダーのPR」と続きます。
想定される色々な入口を用意し、その上で同一の解決方法を提案するというマーケティングは他でも見かけますが、これほど「ユーモア」が際立つ広告はそうお目にかかれません。
さまざまな広告例
他にも様々な企業が独自の商品をPRする広告を出しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソン「BAND-AID」
ジョンソン・エンド・ジョンソンが販売する絆創膏「BAND-AID(バンドエイド)」。言わずと知れた定番商品ですが、同商品の広告が世界で多くの共感を呼びました。その面白い広告がこちらです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの絆創膏「BAND-AID(バンドエイド)」は、従来、一色のみで展開していました。しかし、「多様な肌の美しさを包含する」ことを目的に、色のラインナップを充実させるとともに、黒人に対する人種差別撤廃を訴える運動「Black Lives Matter」への寄付も表明しました。
人種差別や暴力などが世界的な問題となっている中で、この対応には世界中の多くの人々から賞賛の声があがっています。
企業が事業活動を通じて社会問題の解決に取り組む。近年ではこういった動きが広がってがってきましたが、それを効果的に情報発信し、共感を得るのは容易ではありません。また、情報発信の仕方や、表明から実行までの期間によっては、「聞こえの良いことを言うな」「結局何もしないで口だけじゃないか」と批判されるリスクもついてまわります。
明確な意志と行動力を併せ持つ同社の取り組み。ここから学ぶことはとても多いでしょう。
マクドナルド「ビッグマックベーコンのリニューアルポスター」
マクドナルドの面白い広告。それは世界中で多くの人が知る名画の一部に「ベーコン」を紛れ込ませるという斬新な手法でした。
マクドナルドの看板商品としていわずと知れたビッグマック。これにベーコンをinしたビッグマックベーコンのリニューアルに伴って打ち出した面白い広告がこちらです。
名画「モナ・リザ」の肩にそっと添えられている、ベーコン。違和感なく描かれており、注目しなければ気が付かないほどのクオリティです。
また、アメリカの「モナ・リザ」とも称される「アメリカン・ゴシック」やゴッホの自画像にベーコンを加えたポスターも。
一見意味不明なこれらの広告ですが、読み解くポイントになるのが、アートの楽しみ方のひとつでもある、「この作品は何を伝えたいのか?」を考えること。広告の左下には「A classic.With bacon.」と記載されていますが、『「伝統×ベーコン」のコラボレーションで、新たな価値を生み出します。』というメッセージが含まれているといえます。
一見意味不明な表現で興味を引き、記憶への定着を促す。これがマクドナルドの広告の面白いところであるといえるでしょう。
Clas Ohlson「植えると花が咲く広告」
スウェーデンのホームセンター「Clas Ohlson」。同社の広告はマイナスをプラスに変える発想で多くの人に驚きを与えました。その面白い広告がこちらです。
パッと見ではこれといった特徴はなさそうなこのページ。実は、このページには本物の花の種が入っているのです。
特殊な紙でできたこのページを土と一緒に鉢植えに入れて水をやると…
なんと、きれいな花が咲いて可愛い花壇に変身!
雑誌の広告は邪魔だと感じる消費者は多くいますが、ある調査によると、スウェーデンでも国内の約半数の消費者が「雑誌の広告は邪魔」だと感じているとのこと。
生活に役立つものを販売するのがホームセンターですが、雑誌に載せた同社の広告は邪魔だと思われている。この矛盾をどうにかできないか…。同社の広告担当者が悩んだ末に思いついたのが「広告を役立つものにしよう」という発想の転換です。
広告にネガティブな面があったとしても、「仕方ない」で終わらせない。既成概念を吹き飛ばすアイデアがあれば、ネガティブなイメージを持たれている雑誌広告ですらポジティブに活用できることを体現した広告であるといえるでしょう。
NIKE「グラフィティーアートにスニーカーの絵を」
ブラジルのサンパウロでは、街の景観を損ねるグラフィティーアート(落書き)が流行しており、行政の対策もむなしく、消しては描かれるというイタチごっこの状態でした。これを利用してNIKEが行った面白い広告がこちら。
なんと、街中のグラフィティーアートに同社のスニーカーを書き足したのです。しかも、描き足されたスニーカーは、特別モデル。位置情報システムを活用し、そのグラフィティーアートの前でのみ購入可能としたのです。
これによって、街の治安を乱すネガティブな場所が一変。プレミアムなスニーカー売場という、地域に賑わいを生むポジティブな場所に生まれ変わりました。
この取り組みで、NIKE公式サイトへのアクセス数は22%も増加し、ソーシャルメディアでも8億件のリーチを得たとされています。強力なブランド力を活かし、マイナスをプラスに変える仕掛けが実に見事な広告だといえるでしょう。
ブラックサンダー「Eats」
チョコレートの甘さとビスケットのくちどけが人気の「ブラックサンダー」。同商品を製造する有楽製菓がTwitterの公式アカウントで4月1日にツイートした面白い広告がこちら。
ツイートの本文には、「ブラックサンダーEatsを開始!1本からお届けします♪別途送料は頂きます。」との記載あり。単価30円のお菓子を1本から配達とは、なんて斬新なサービス!と思いきや…実はコレ、エイプリルフールネタです。
同アカウントの中の人によると、「コロナ禍で外出したくてもできない人たちに笑顔になって頂きたい」との思いで発信したとのこと。
日本一ワクワクするお菓子屋さんを目指している企業が発信する、「人を笑顔にする」ためのユーモアある広告。理念と一貫した広告は消費者の共感を呼びます。真面目に情報発信するだけではお堅い内容となりがちですが、ここに「クスッと笑える要素」を組み込むことで、伝わりやすく、広がりやすくなります。シンプルですが、ぜひ参考にしたい広告の事例です。
まとめ
企業の広告には様々なカタチがあり、表現の方法も無限に存在します。その中でも特に「社会の抱える課題×企業の強み・思い」の広告は、消費者からの共感や応援を得て、ポジティブな企業イメージが広い範囲に拡散されます。
自由な発想とユーモアを育むこと、社会の課題に敏感であること、良質な広告に触れて引き出しを増やすこと。常日頃からこれらを意識しておくことが、良い広告をつくる近道といえそうです。
<参考>
街の落書きが“売り場”に変身! NIKEの秀逸なOOH
「もう どう広告したらいいのかわからない」キンチョウの潔さが話題(withnews)
【クリエイティブで面白い!】海外の広告事例集8選 2019(N2P)
街でみつけた面白い広告一覧(ADneL)
わたしの心に残った、おもしろい広告。(広告がおもしろくなるnote)