「マトリクス組織という言葉をたまに聞くけど、どんな意味があるんだろう」
「メリットやデメリットを知って理解度を高めたい」
このように考えている企業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マトリクス組織という言葉を聞いただけでは、いまいち意味をイメージしづらいですよね。
そこで、今回の記事ではマトリクス組織の詳細、メリットやデメリットを徹底解説します。
マトリクス組織を成功させるためのポイントや事例についても記載しているので、あわせてご参考にしてみてください。
マトリクス組織とは?
マトリクス組織とは従業員を機能、エリア別など異なる形態の組織、プロジェクトに所属させることを指します。
2つの所属になるため、従業員を状況によって柔軟に稼働させることが可能になるため、ビジネスにおける目的を達成しやすくなります。
複数の目的を同時に達成させるためにも、企業が積極的に取り入れる考え方の1つと言えるでしょう。
ただ、2つの所属になるということはその分、管理が大変になるため高いマネジメント能力が必要になります。
マトリクス組織のメリット
マトリクス組織のメリットとして、業務効率の向上が挙げられます。
新たなプロジェクトを始める際に新しく人事異動をする必要もない上に、他の部署とも協力して働きやすいので、従業員の負担を軽減できるはずです。
また、様々なプロジェクトや他の部署とも関われるため、従業員の視野も広がりやすくなります。
能力向上にも繋がりやすいため、従業員の育成を効率化したい場合にもおすすめです。
業務効率化や従業員の育成に力を入れたいという場合は、マトリクス組織の概念を積極的に導入していきましょう。
マトリクス組織のデメリット
マトリクス組織の考えを取り入れる場合、命令系統が二分化して複数のマネージャーで意見が分かれてしまうことがあります。
従業員が混乱するだけではなく、マネージャー同士でも対立が起きてしまう場合もあるでしょう。
組織運営に悪影響が出て、プロジェクトがうまく進まない可能性が生まれます。
コミュニケーションを上手くとれる体制を作らないと、逆に業務効率が落ちてしまうことも珍しくありません。
従業員、マネージャーが混乱して対立しないためにも、命令系統の整備をしっかりと行いましょう。
マトリクス組織を成功させるために必要な3つのポイント
マトリクス組織を成功させるためにも、以下の3つのポイントを把握しておきましょう。
指示系統をまとめる
一部の業務に集中させないようにする
成功事例を参考にする
いずれもマトリクス組織を成功させる際に外せないポイントなので、じっくりと確認することが大切です。
1. 指示系統をまとめる
マトリクス組織では2つの組織の上司から指示を受けることになるので、しっかりと指示系統をまとめる必要があります。
改善方法としては、異なる組織に属する上司どうしで連絡を取り合い、情報共有を行うことがおすすめです。
定期的に連絡を取り合うことで、組織間で情報の齟齬がなくなるため、従業員が混乱するのを防げます。
また、チャットツールでルームを作り、組織間のトップどうしで連絡を取り合える環境を作るのも大切です。
情報をすぐに共有できる体制を作り、従業員を混乱させないようにしましょう。
2. 一部の業務に集中させないようにする
状況やタイミングによっては、1人の従業員に2つの組織からの業務が多く集中することがあります。
もし、業務が一部の従業員に集まってしまうと、大きな負担になってしまうことになるでしょう。
従業員の疲労が蓄積し、業務パフォーマンスが下がってしまうことがあるので注意が必要です。
対策として業務がどのくらい集中しているのか、常に可視化できるようにチャットでの共有を徹底しましょう。
従業員にストレスが溜まってしまうと、離職の原因になりかねないため健全な労働環境の構築を意識することが重要です。
3. 成功事例を参考にする
マトリクス組織を行う場合、成功事例を参考にすることでスムーズに自社内でも実行できます。
成功事例を知らずにそのままマトリクス組織を始めてしまうと、失敗することが多いです。
せっかくマトリクス組織の考え方を導入してもメリットを実感できず、逆に業務効率が落ちてしまう場合もあります。
そこで、他社の成功例を確認した上でどの部分を工夫しているのか、なぜ成功したのか理解した上でマトリクス組織の考えを取り入れましょう。
マトリクス組織を実施した企業の成功例3選
マトリクス組織を実施した企業の成功例として、以下の3つをチェックしておきましょう。
花王
トヨタ
村田製作所
確かな成功を掴んでいる事例なので、自社に取り入れる際の参考にしてください。
1. 花王
美容品を販売する花王では、マトリクス組織の考えを取り入れて商品開発などに役立てています。
花王の。研究開発部門は「商品開発研究」と「基盤技術研究」に分かれており、共同して研究を推進するマトリクス運営を行っているのが特徴です。
ブランドや商品の開発、科学や技術の研究を行っている部署で仕事を共同で進めてレベルの高い開発を実現しています。
それぞれの専門領域の知識が積極的に好感され、研究開発のスピードアップにも大きく貢献しているそうです。
多くの研究員が同じフロアでコミュニケーションを取って情報を交換しながら、日々の研究を進めているため、情報の齟齬が生まれにくくなっているのもポイントと言えるでしょう。
それぞれの分野のプロフェッショナルが互いに協力し合って、企業のレベルを高めている事例と言えます。
2. トヨタ
大手自動車メーカーであるトヨタでも、2013年にマトリクス組織の考えが導入されています。
従来の機能別組織として開発チーム、調達チーム、生産チームが存在していましたが、グローバル展開に対応できるように追加で以下のチームが作られました。
新興国チーム
先進国チーム
高級車チーム
各チーム間の情報共有も活発になり、社内でもノウハウが蓄積されていき、結果的に会社や従業員の成長に繋がったのです。
適当にマトリクス組織を始めるのではなく、確固たる目標と体制を整えていたところが成功要因の1つと言えるでしょう。
3. 村田製作所
国内でも大手の電子部品メーカーである村田製作所では独自の「3次元マトリクス組織」を実現させています。
セラミックス・コンデンサーなどの電子部品を製造している村田製作所は、コンデンサーや圧電部品といった製品を開発しています
そこに「調合」「成形」などの製造工程もかけ合わせて、マトリクス組織を構成しているのが特徴です。
さらに、本社機能スタッフがグループ横断で間接業務を請け負っているため、作業やコミュニケーションコストを減らすことに成功しています。
まさに3次元という形を活かして、無駄なく製品開発を行っている事例と言えるでしょう。
まとめ
マトリクス組織を上手く導入することで、業務効率化や従業員の育成に繋げることが可能です。
ただ、指示系統が2分化しやすいので、情報共有を怠ると従業員が混乱しやすくなります。
最悪の場合、業務効率の低下や従業員へのストレスを増加させることにも繋がりかねません。
そのため、マトリクス組織を作る場合はコミュニケーションが取りやすい環境を構築しましょう。
他社の成功事例も確認しながら、目標や体制を定めてから実行するとより働きやすい環境作りに繋がるはずです。
何となくマトリクス組織を始めるのではなく、情報をしっかりと吸収した上で体制を整えていくといいでしょう。