広告業界などでよく使われる「グロス」と「ネット」という専門用語をご存じでしょうか?
イマイチ違いがわからない人も多いと思います。
マーケティング業界や広告業界に携わっているなら、これらの用語を知っておかないと思わぬミスをしてしまう可能性があります。
今回はグロスとネットの違いやそれぞれの考え方、使うときの注意点などを解説します。
広告におけるグロスとネットとは
これらは広告業界でよく使われる言葉です。
それぞれの定義を紹介するので、この機会に両者の違いを理解していただき、数字の分析や広告運用の参考にしてください。
グロスとは
グロスとは、広告を配信するのにかかった費用の総合計のことです。
英語ではgrossと書き「全体的な」「総~」といった意味になります。
のちほど説明するネットは原価のことを指しますが、ネットとマージンを合計した全てのお金をグロスと呼び、いわゆる「合計金額」の意味で使うことが多いです。
ネットとは
ネットとは、広告の配信にかかった原価のことで、言い換えると広告費です。
広告を配信する際はキャッチコピーやデザイン、音声など様々な要素を組み合わせて配信内容を作りますが、それらにかかった金額をまとめてネットと呼びます。
Netというとインターネットを連想する人が多いかもしれませんが、本来は「利益」を意味する単語です。
グロスとネットは混同されがちですが、グロスはネットとマージンの2つで構成されるので、厳密には同じ意味ではありません。
グロスとネットを理解するために必要なマージン
グロスとネットについて説明するときに欠かせないのがマージンです。
マージンは広告業界以外でも使われることが多くご存じの方も多いと思いますが、手数料のことを指します。
広告の場合でいうと、広告主が広告代理店に対して支払う、いわゆる売上総利益です。
英語ではmarginと書き、一般的には「余白」の意味がありますが、ビジネスシーンでは「粗利」「利幅」を意味します。
このマージンとネットを合計したものがグロスであり、広告配信にはこの3つのお金が関わってきます。
マージンは大体全体の20%前後であることが多く、低いときは15%、高いときは30%ほどと幅があります。
広告におけるグロスとネットの注意点
広告を配信するうえで気を付けたいのが「ネット建て」「グロス建て」の2つの言葉です。
2つの違いを混同してしまい、金額に齟齬が出ることがよくありますので、広告の金額に関わる仕事をされている方は注意してくださいね。
グロス建て
マージンをネットに対してかけるのか、グロスに対してかけるのかで金額が大きく変わります。
グロスに対してマージンをかけるのが「グロス建て」です。
たとえば、以下の条件で計算してみます。
グロス:240万円
ネット:200万円
マージン:20%
上記の場合は、240万円に対する20%なので、マージンは48万円です。
グロス建てはネット建てとは違い、あらかじめグロス金額が決まっているのが特徴的です。
マーケティング業界や、新聞や雑誌などの紙のメディア広告ではグロス建てが多く、ネット建ての計算だと手数料金額が合わなくなってしまいます。
見積もり算出時などはどちらの形式が前提になっているか確認し、相手と認識の齟齬がないよう気を付けましょう。
ネット建て
「ネット建て」は、広告費(ネット)に対してマージンをかけるという意味です。
さきほどの条件でいうと、以下の通り計算できます。
ネット:200万円
マージン:20%(=40万円)
グロス:240万円
この場合は200万円の20%なので40万円がマージンになり、グロスは240万円になります。
このようにネットに対してマージンが決まり、最後にグロスが決まるのがネット建てです。
従来はグロス建ての形式が多かったのですが、ここ数年ではWebマーケティングの配信が多くなりネット建てが増えています。
プロジェクトによっては、こちらがグロス建てだと思っていても相手はネット建てで計算しているかもしれないので、どちらが使われているか気を付けなくてはいけません。
グロス建ての例【テレビや新聞】
具体的にネット建てではどのようにやり取りがなされるのか、テレビや新聞の例をご紹介します。
たとえば、テレビの場合は「1枠につき1,500万円」と広告の費用が決まっています。
その枠を広告主が買い、費用に対して一定の利率をマージンとして代理店が受け取る仕組みです。
あくまで一例ですが、具体的な計算式は以下の通りです。
【前提】
グロス:1,500万円
ネット:1,200万円
マージン:300万円(利率は20%と決まっている)
【流れ】
広告主が1,500万で枠を買う
1,000万を使って広告を作る
500万円を代理店が受け取る
ネット建ての例【Googleアドセンス】
GoogleアドセンスなどのWeb広告はネット建てが多く、マスメディアのようにグロスに対して手数料が算出されるわけではありません。
たとえば、とある企業が代理店を通して、Googleアドセンス広告を配信したとします。
この場合、Googleから代理店に対してネットが請求される仕様になっています。
そのため、代理店がGoogleから請求されたネットに対してマージンを算出し、広告主に請求するのです。
【前提】
ネット:1,200万円
マージン:240万円(ネットに対する20%)
グロス:1,440万円
【流れ】
広告主が代理店に広告配信を依頼
代理店がGoogleアドセンスに依頼
Googleアドセンスから代理店へネットの請求がくる
代理店はネットに対するマージンを算出
ネット建てのマージンを上乗せして広告主に請求
上記はあくまでも参考のため、必ずしも商流が上記の流れになるとは限りません。
ただ、このような傾向があることがわかれば、金額に対する認識の齟齬を解消しやすくなります。
グロス、ネットとCPAの関係性
グロスとネットを見るときに合わせて知っておきたいのがCPAです。
CPAとはCost per Actionの略で、成果が出た際にかかった費用のことを指します。
たとえば、広告を配信して自社のサプリメントが1つ売れたら、成約までにかかった広告費がいくらだったのかを見るのです。
CPAは以下の計算式で算出できます。
広告費用÷CV数=CPA
CV数とは、成果が出た数のことです。1か月にサプリメントが30個売れたら、月間CV数は30です。
CPAの考え方
CPAを計算する際の広告費用をネットにするかグロスにするかは悩ましいところです。
先ほどのサプリメントの例を使って実際にシミュレーションしてみましょう。
ネット:80万円
マージン:20万円
グロス:100万円
月間CV数:30件
商品単価:20,000円
上記のケースでネットを広告費用とした場合
80万円÷30=約26,000円
グロスを広告費用とした場合
100万円÷30=約33,000円
このように大きな開きがあります。
グロスを広告費用とした場合はCPAの数値が大きく見えるので安心してしまいがちですが、あくまでもマージンを含んだうえでの数字です。
マージンを抜いたネットを対象としたときにどうなるのか、2つの指標から分析することを意識しましょう。
まとめ
広告業界においてよく使われるネットとグロスの2つについて解説しました。
ネットは広告原価のこと、グロスはマージンを含んだ総額のことなので、まったく別の数字として扱う必要があります。
これから見積のやり取りをする際や、広告を活用したマーケティングをする際はこれらの違いに気を付けましょう。
またCPAを出す際にはどちらの数字も計算し、今のビジネスモデルに改善点がないか、複数の観点から見て問題はないか見ることを意識してください。