ベンチマーキングは、同業の優良企業の業務プロセスや、経営手法などと自社を比較することで改善点を洗い出し、業務効率化へとつなげていく手法です。業績が伸び悩んでいる商品やサービスがある場合に、ベンチマーキングを活用することで改善を図ります。
この記事では、ベンチマーキングについてメリットや、やり方などについてわかりやすく解説します。
ベンチマーキングとは?
ベンチマーキングとは、経営や業務プロセスに関する優良な事例(ベストプラクティス)を分析し、自社の業務効率の向上へとつなげる経営手法です。
語源は、靴の修理屋で客が足をベンチにのせ、足の形をなぞってマークして計測することをベンチマーキングと言っていたことに由来します。
ベンチマーキングは、自社のサービスや商品、プロセスを継続的に測定し、競合の優良企業と比較をすることで自社のパフォーマンスを向上させようというマネジメント手法です。
ベンチマーキングのメリット
ベンチマーキングをすることで、さまざまなメリットがあります。具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
客観的に自社のパフォーマンスを把握できる
自社の成績が伸び悩んでいるという問題が生じた際、内部の部署間だけで業績比較をしたのでは主観的となってしまうため、問題点を特定できないケースがあります。
適切にベンチマーキングし、競合他社の優良な事例と比較して調査することで、自社が置かれている現状を客観的に把握できます。それにより、なぜ自社のパフォーマンスが悪いのかが明確となるため、改善策を講じやすくなります。
競合他社の優れている部分を吸収できる
ベンチマークに設定した、優良企業の優れている部分を学んで吸収できれば、自社の問題点の改善にもつながります。
新規事業を始める際も、ベンチマーキングはとても有効的です。新規事業は実施する項目がとても多いため、経験のない自社内だけで考案したプロセスで業務を遂行しては非効率です。それよりも、成功をしている優良企業をベンチマークして、手法やプロセスを学ぶことで効率的な業務プロセスをつくれるのです。
また、新商品の競合他社の戦略を分析することで、そのビジネスの将来的な可能性を把握できるため、その事業に投資をするかどうかを事前に判断できるというメリットもあります。
ベンチマーキングの注意点
反対に、ベンチマーキングを実施する際の注意点について解説します。
本質的な部分をマネすることは難しい
もし、他業種の企業へベンチマーキングを行った際、最終的に自社へノウハウを取り入れられず見込み違いだったというケースです。
表面上では、同じような業務プロセスを構築できても、実際の資産や人材リソースを考えると、本質の部分では真似することは難しい場合もあります。
新しいアイデアを出せない会社となってしまう
同業界で、優良企業の優れた手法にばかり頼りすぎてしまうと、自社内で革新的なアイデアを出せない企業となってしまう可能性があります。大きな失敗のリスクが減るベンチマーキングですが、その業界でトップシェアを勝ち取る可能性が少なくなってしまいます。
しかし、これらはしっかりとした競合調査ができれば回避できます。
トップに立つという考えは、実はベンチマーキングの本質ではないと言えます。なぜなら、ベンチマーキングの目的はベストプラクティス(優良な事例)を超えて競争優位を確立することにあるからです。競合調査を行い、自社と他社の優劣を客観的に比較・評価します。
それにより、固定観念を知ることもでき、同じ業界や自社内にある古くなった体制を一掃することで、結果的に業界のトップへと進むことも可能なのです。
ベンチマーキングの種類
比較する対象によって、ベンチマーキングにはいくつかの種類があります。ここでは、代表的なベンチマーキングの3種類について解説します。
内部ベンチマーキング
自社の内部や、グループ内の別のチームや商品をベンチマーキングするという手法です。
もし、同じような製品やサービスを提供していたり、似たようなプロセスで業務を行っていたりした場合は、自社内で比較することでお互いに参考になる点が見つかるケースもあります。
同じ組織なら協力をお願いしやすく、細かいデータまで共有してもらえるというメリットがあります。逆に、業務のプロセスが似通っていることが多いため、抜本的な改善にはつながらないリスクもあります。
競合ベンチマーキング
競合となる優良な企業を分析し、サービスや商品に関して、また経営戦略や業務プロセスの優れた点を自社に取り入れる手法です。
自社と近い業種であるため、参考になることが見つかりやすいメリットがあります。直接競合する製品やサービスであれば比較しやすいため、改善点を取り入れた新製品の開発へつなげられます。
一方、内部のベンチマーキングとは異なり協力を得られないため、分析に手間と時間のコストがかかります。
機能ベンチマーキング
顧客へサービスや商品を提供するまでの業務プロセスや働き方など、企業の「機能」を対象に競合他社をベンチマーキングする方法です。
対象が「機能」なので、相手は必ずしも競合他社でなくても構いません。
例えば、「在庫管理の方法に課題がある」というケースであれば、在庫管理を得意としている企業をベンチマーキングすれば良いのです。
したがって、ベンチマーキングするのは同じ業界の企業である必要はなく、むしろ異なった業種の企業を対象とした方が、新たな気づきを得られることもあります。
ベンチマーキング4つのやり方
ベンチマーキングは、正しい手順に従って実施することで威力を発揮します。ここでは、以下4つの手順について解説していきます。
STEP1:改善項目を洗い出す
改善の対象になる項目で、経営戦略や事業ドメインなどの規模の大きな事柄から、業務プロセスや集客方法など細かいものまでを洗い出します。
競合他社をベンチマーキングによって分析し、自社と比較して必要だと思われる改善項目をすべてリストアップします。
STEP2:対象のベンチマーキングを確定する
対象とするベンチマークは、改善すべき項目についてうまく運用している企業が最もふさわしいでしょう。
例えば、顧客の問い合わせ対応を改善したいならば、カスタマーサポートなどの顧客対応が充実している企業をベンチマーキングすると良いでしょう。
同じ業界にこだわることなく、幅広い範囲を調査して見本とするべき企業を探索しましょう。
STEP3:ベンチマークの観察と分析
対象のベンチマークを決定したら、その企業を観察して分析を行います。
まず、業務を行っているところを実際に観察し、顧客満足度のデータや財務諸表などの情報も観察します。
その後、得られた情報をもとに詳細に分析していきます。自社と比較し、対象の優れているところを特定し、その要因を見つけ出すことが大切です。
STEP4:改善計画を策定し実行する
改善計画では、改善によって達成したい目標と改善するための方法を明確にすることが重要です。
例えば、集客方法を改善したい場合、SNSでの新規集客を実施し、月間の見込み顧客を15%増やす、というような具体的な計画をつくりましょう。
改善計画を策定したのち、それに沿って間違いなく実行します。
まとめ
ベンチマーキングは、同業の優良企業と自社の業務プロセスなどを比較することで、自社における改善点を特定します。それにより、業務の効率化を行い同業他社にも負けない企業への成長を図ります。
会社お業績が伸び悩んでいる場合、一度ベンチマーキングの実施をご検討されてみてはいかがでしょうか。