新規事業の立ち上げは、企業にとって欠かせない経営戦略の1つです。しかし、新規事業を立ち上げても失敗するケースも少なくありません。
新規事業を成功させるために知っておきたいポイントについて、分かりやすく解説します。実際の成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
新規事業のパターンは3つ
新規事業は、
・本事業の関連事業への参入
・本事業と関連の無い事業への参入
・事業買収による参入
の3つに分類されます。それぞれのパターンについて、1つずつ見ていきましょう。
本事業の関連事業への参入
3つのパターンの中で、最も一般的で成功の可能性が高まるのが、この「関連多角化」です。このパターンでは、既に企業が本事業で獲得したヒト・モノ・情報といった経営資源を活用することができます。
また、商品の販売先やサービスの提供先、仕入先などの外部との関係も有効に活用可能できるため、新規事業が失敗に終わる可能性を抑えることが可能。中小企業の場合、経営資源が限られていることが多いため、既存の資源を活かした関連多角化が有効だといえるでしょう。
一方で、関連多角化による新規事業の立ち上げは、本事業が不調になった際に、関係性の強い新規事業も共倒れになる可能性があるので注意が必要です。
本事業と関連の無い事業への参入
本事業とは関係のない、いわゆる「無関連多角化」による新規事業の立ち上げ。本事業とは関係がなくても、急成長している市場や将来性のある分野に進出して事業を育てることは、企業価値を高めることにつながります。
このパターンでは、本業の経営資源を活かすことはできませんが、本事業との関連が無いので、本事業が不調に陥ってもその影響を受けて共倒れするリスクを軽減することが可能です。ただ、完全に素人の状態で競合他社に挑むのは、リスクが高くおすすめできません。
その分野を自社で研究することはもちろん、事業の経験者を中途採用したり、専門家や公的機関と連携するなどして自力を養っていきましょう。
事業買収による参入
新規事業での市場参入を最も早く実現できるのが、この「事業買収」です。
例えば、食品スーパーが飲食店を経営したいと考えたとします。この時、イチから始めると、事業計画の策定、物件や厨房機器の取得、料理人の手配…など、どうしても一定の準備期間が必要となります。しかし、既存の他社事業を「事業買収」すれば、ノウハウも一緒に手に入れることができるため、新しい市場にもスムーズに参入することが可能。
事業買収による新規事業も、上述した「関連多角化」と「無関連多角化」に分かれます。既存の本事業とのシナジー(相乗効果)を得られる関連多角化か、リスク分散や魅力的な市場への参入を可能にする無関連多角化か、自社の長期的な成長戦略をもとに展開を検討すると良いでしょう。ただし、買収先には十分なデューデリジェンス(企業価値・将来性・リスクの調査や分析)を行うことが必須です。
思わぬトラブルを招く場合もあるので、細心の注意を払いましょう。
新規事業の事例①「ホンダ」
日本を代表する自動車メーカーのホンダですが、ホンダは、1964年に本田航空株式会社を設立し、航空機開発に着手しています。2016年には念願の第1号機であるホンダジェットを納入し、いまや、世界で約150機が運用。
ホンダジェットは自社開発の高性能エンジンを搭載し、ライバル企業の機種を性能面で圧倒しています。本事業で高めた自動車製造の技術を活かして成功した事例といえます。
新規事業の事例②「スマイルズ」
手広いビジネスを展開する三菱商事。その外食サービス事業の担当者が出向していたケンタッキー・フライド・チキンで「スープ」の持つ可能性に気付き、三菱商事から社内ベンチャーとして派生したのが「スマイルズ」です。スマイルズは女性をターゲットとした、「食べるスープ」をコンセプトとした「スープストックトーキョー」を運営して成功を収めて2000年に分社化。2008年には資本的にも独立しました。
新規事業の事例③「ユニ・チャーム」
紙おむつや生理用品などの日用品でおなじみのユニ・チャームは、かつて、幼児教育、結婚情報サービス事業など無関連な多角化を進めていました。しかし、不要な経営資源の分散を招き方向転換。現在は生理用品分野で高めた不織布と吸収体の加工・成形技術に集中し、これを応用して多くの分野に進出しています。
近年では、ペット用のトイレシートや紙おむつなどでシェアを拡大。選択と集中で自社が得意なもので勝負し、その用途で新規事業を開拓していく手法は大いに参考となるでしょう。
新規事業の事例④「ヤマト運輸」
クロネコヤマトでおなじみのヤマト運輸ですが、ヤマト運輸は、一見、関係のなさそうな、家電の修理やメンテナンスに参入しています。自慢の物流システムを活用して、調子の悪くなった家電の回収~修理~返却までをワンストップで対応。この一連の流れは最短3日でおこなわれ、依頼主は修理の状況をシステムで確認することが可能となっています。
本事業で構築した物流システムという圧倒的な強みを活かした、実に合理的で効率の良い新規事業展開といえるでしょう。
新規事業の事例⑤「パナソニック」
誰もが知る家電メーカーのパナソニックは、2014年、農業に参入しました。自社のデジタルカメラの工場を利用し、人工光型の野菜工場を稼働。レタスやホウレン草など、多くの野菜を食卓に届けています。
「パナソニック×農業」という組み合わせは意外に感じる方も多いと思いますが、パナソニックは年十年もの間、空調や水回り、防蛾灯などを農業者に販売してきた実績があります。これらの製造・販売で培った技術とノウハウにより、新事業を成功させたのです。
新規事業を成功させるために重要なポイント
新規事業を成功させるため、事前にはっきりさせておくべきこと。
それは、
- 「自社の現状把握」
- 「新規事業に参入する目的」
- 「新規事業で達成する目標」
です。これらを明確化することで、成功の確率を高めることができます。
自社の現状把握
自社のヒト・モノ・カネ・情報などを正確に把握すれば、新規事業で活用可能な経営資源を把握することができます。シナジーを狙う関連多角化はもちろん、自社にない部分を補う無関連多角化を目指す場合にも、自社の現状を把握することが重要です。
新規事業に参入する目的
新規事業に参入する目的を明確にして組織内に示すことで、組織としてのベクトルの方向と強さを統一できます。従業員への十分な説明がなく、納得感がないまま始める新規事業は、失敗することもおおいもの。
新規事業を成功させるためには、売上の拡大やシナジーの追求、リスク分散などの目的の明確化を行いましょう。
新規事業で達成する目標
新規事業での売上や利益など、新規事業での目標を数値化することで、本事業と合算した事業計画を策定することができます。これによって、組織として新規事業に取り組む意義がより明確になり、全社的な新規事業のバックアップ体制が整うのです。
新規事業単体での細かい事業計画の策定も必須ですが、全社的な視点も忘れないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?新規事業への参入は、その成否にかかわらず、企業にとって大きなインパクトをもたらします。新規事業に参入する3つのパターンと成功するためのポイントを踏まえて、新規事業への参入を検討みてください。
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