ベストプラクティスとは?ビジネス用語としての意味、メリットを解説

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「ベストプラクティスってどういう意味があるの?」
「どんなメリットがあるの?」

ベストプラクティスは「最善の方法」「成功事例」「業界標準」など、いくつかの意味あいをもつビジネス用語です。

使う場面や文脈から判断する必要があるため、いまいち意味がわからないと感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、ビジネス用語におけるベストプラクティスの意味を、具体例をまじえて解説します。

ベストプラクティスを実施するメリットやデメリット、事例もあわせて紹介しますので、あわせてご参考にしてください。

ビジネスにおけるベストプラクティスの意味とは?

ベストプラクティスは、ビジネスにおいて「(良い結果を出すための)現時点での最善の方法や手段」「成功事例」を指す言葉です。

実際の使用例をいくつか紹介します。

“トヨタ生産方式は、世界でもっとも効率的な生産方式として、自動車産業だけでなくアパレル産業など様々な分野で、生産方式のベスト・プラクティスとして学ばれています。”

引用:構造計画研究所

国土交通省鉄道局では、全国の地方運輸局とともに、鉄道を元気にする取組を行う上で参考となる事例を収めた「ベストプラクティス集」を作成いたしました。

引用:国土交通省鉄道局

1つ目は「現時点での最善の方法や手段」、2つ目の例は「成功事例」を意味しています。

その他にも、分野によっては「業界標準」を指すことがありますが、ベストプラクティスは1つの意味合いで捉えようとすると理解が難しくなります。

「現時点における1番良い方法や手段(つまり業界標準になるほど優れている方法)」という意味を理解しておくと、場面や文脈から判断しやすくなるでしょう。

ベストプラクティスとベンチマーキングの違い

ベストプラクティスと関連したビジネス用語に「ベンチマーキング」があります。

簡単に説明すると、優れた方法をお手本にして比較分析することです。

ベンチマークは「基準」や「指標」を意味します。

指標があることで現在地を正確に把握し、改善点や次にとるべき行動が明確化できます。

ビジネスにおいてベンチマークとなるのは、優れた競合他社や優良企業のベストプラクティス(成功事例)です。

商品、売上、業務プロセス、慣行などを自社とベンチマーキングすることで、業務の効率化へとつなげられます。

ベストプラクティスとレプリケーションの違い

レプリケーションは、主にIT業界で使われている専門用語の1つです。

ネットワーク上にある大元のデータを複製し、リアルタイムで同期化して保存する技術のことを指します。

何らかのトラブルによって大元のデータに障害が発生したとしても、複製されている予備のデータで業務を継続することが可能です。

災害対策や、公共交通機関のリスク管理のために活用されています。

ベストプラクティスを実施するメリット

ベストプラクティスを実施する最大のメリットは「業務の効率化」や「生産性の向上」につながることです。

例えば、経理業務において膨大な書類作業が過重労働の要因となっているとします。

この場合のベストプラクティスは「経理システムの導入、人員の増員や外注化、業務フローの見直しや可視化」などが考えられます。

これらの施策を実施することで作業の効率化や労働時間の最適化、生産性の向上が見込めるでしょう。

すでに成果が実証されている他社のベストプラクティスを導入する場合は、以下のメリットが挙げられます。

自社で思案・検討する時間や費用が削減できる
自社の想像を超えた新しいアイデアを取り入れられる
具体的な成果がイメージしやすく前向きに受け入れられやすい

既に成果を実証されているベストプラクティスを導入することで、迅速に結果に結びつく可能性が高くなります。

ベストプラクティスを実施するデメリット

ベストプラクティスを実施しても、思うような成果が得られない可能性もあります。

例えば、経理業務の負担軽減を目指し、ベストプラクティスとして新たな電子システムや人員の増員を実施したとします。

あくまでも理論上において最善と考えられる方法を実施しますので、結果としてうまく作用せず、かえって混乱が生じることもあるでしょう。

成功している他社のベストプラクティスを取り入れる場合においても、自社で同じような成果が得られる保証はありません。

そのため、社員の能力や個性、価値観、最適なタイミングなど、自社のさまざまな状況を考慮してベストプラクティスを実施する必要があります。

ベストプラクティスにおける事例6選

ここからは、ベストプラクティスの実施によって大きな成果を出した企業の実例を紹介します。。

  1. 楽天株式会社
  2. 住友生命保険相互会社
  3. 大和証券株式会社
  4. 株式会社三菱東京UFJ銀行
  5. 株式会社健康家族
  6. イケア・ジャパン株式会社

これからの時代にも通用する事例ですので、ぜひご参考にしてください。

1. 楽天株式会社

楽天株式会社は、誰もが知る日本国内最大級のインターネットショッピングモール「楽天市場」を運営する会社です。

2008年の台湾楽天市場の立ち上げをきっかけに海外展開を開始したものの、グローバルに活躍できる人材不足が課題でした。

そこで2012年に社内の英語公用語化を開始しています。

そこで外国籍の人事採用にも力を入れ、カフェテリアの宗教食対応や礼拝所の設置など、多様な人材を受け入れる仕組み作りを行いました。

その結果、海外関連企業との円滑な連携、世界各国からの優秀な人材の確保、サービスの質の向上が実現し、ベストプラクティス企業として選出されました。

2. 住友生命保険相互会社

住友生命保険は1907年に創業された歴史ある大手生命保険会社です。

女性社員の割合が9割を占める同社ですが、2000年代中ごろまでは女性の活用が進んでいませんでした。

女性社員のキャリア形成を支援する環境を整えるため、女性総合職の増員、グループマネージャーへの起用、管理職登用を推進しました。

そしてこれらの施策だけではなく、OJTや研修などのベストプラクティスを実施しました。

具体的な成果としては、業務の専門性が深まり、サービスの質や顧客満足度が向上したことが挙げられます。

3. 大和証券株式会社

日本の総合証券会社大手の大和証券は、女性営業職の育成にいち早く取り組んだ企業です。

2005年に「女性活躍推進チーム」を新設し、結婚・出産を経ても長く働ける環境作りに着手しました。

労働時間の短縮、育休期間の延長、保育施設の費用補助、介護の支援などのベストプラクティスを実施し、ワークライフバランスの向上を実現しています。

4. 株式会社三菱東京UFJ銀行

三菱東京UFJ銀行では、90年代後半まで女性の担当業務は「窓口の預金事務」に限定されていました。

結婚・出産退職で人材が入れ替わっても成り立つ状況でしたが、金融の自由化により状況が一変しています。

保険や証券の取扱いが開始され、女性職員も高度な業務や顧客対応が求められるようになります。

女性のキャリア形成を支援するべく、育休制度、時短勤務制度、託児補助の支援などの取り組みを開始しました。

豊富な経験とスキルを持った女性社員が継続して勤務できるようになり、人材採用のコスト削減や生産性の向上につながったベストプラクティスです。

5. 株式会社健康家族

1976年に創業された健康家族は、鹿児島県に本社を置く通信販売会社です。

カプセルの中にニンニクエキスが入った「伝統にんにく卵黄」で知られています。

創業当初から女性の活躍を推進していましたが、鹿児島県の古い習慣もあり、結婚退職後は家庭に入って復帰しない女性がほとんどでした。

経験を積んだ優秀な女性社員の定着を目指し、出産・結婚後も働き続けられる支援制度や風土作りにむけたベストプラクティスが実施されました。

具体的には、託児所の設置や時短勤務制度、介護休業制度の設置、定時退社の徹底などが挙げられます。

女性社員のアイデアがきっかけで大ヒット商品が生まれ、会社の知名度が向上しています。

女性が働きやすい職場環境であると評判が広がり、大学生の就職希望先としても人気となりました。

6. イケア・ジャパン株式会社

イケア・ジャパンは、スウェーデンで設立された世界最大の家具メーカー「イケア」の日本法人です。

発祥地のスウェーデンにはもともと移民が多く、多様な価値観をもった人々で社会が構成されていました。

日本法人においても、従業員ひとりひとりの働き方やキャリアプランを尊重し、家族との時間を大切にするためのベストプラクティスが実施されています。

  • 休日・休暇の充実
  • 企業内保育所の設置
  • 時短勤務の容認
  • 出産・育児への手厚い支援
  • キャリア形成のための面談

こうした取り組みにより、多様な人材が長期的に活躍できる環境が実現しました。

まとめ

ベストプラクティスは、ビジネスにおいて「その時点で一番効率的で最善の方法」「成功事例」という意味を表します。

ベストプラクティスの実施によって、業務の効率化や生産性の向上など多くの成果が期待できます。

企業はもちろん、働く従業員や顧客にとっても良い影響がもたらされるでしょう。

「ベストプラクティス」は単語で理解しようとすると難しく感じますが、背景には企業のさまざまな取り組みや努力の過程が見えてくる言葉でもあります。

事例をもとに本質的な意味を理解し、企業の取り組みにも活用していきましょう。

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