損益計算書で確認できる「営業利益」とは、企業の本業での収益力を示すものです。営業利益がマイナスまたは赤字になりかねない状況で、倒産の可能性や対策について不安を抱えている方は多くいるのではないでしょうか。そこで今回は営業利益のマイナス表示が意味することや、プラスにするための原因別の対策をまとめました。
営業利益への理解を深め、経営を見直すきっかけにしてみてください。
営業利益とは
営業利益とは、企業の本業でどのくらい利益が出ているのかを示す数値のことです。
本業とはその企業のメイン事業のことを指し、スーパーであれば食材や日用品の販売が当てはまります。
営業利益の計算方法は以下の通りです。
営業利益=売上高-売上原価-販管費(一般管理費および販売費)
ここで、売上原価や販管費について簡単に説明します。
売上原価は商品の仕入れや製造にかかる費用のことで、業界ごとに含める範囲は異なります。
また、営業利益を計算するうえで欠かせないのが、2つの項目から成り立つ販管費。
1つ目の一般管理費は事務所の光熱費や役員報酬など、企業の存続のためにかかる費用のことです。
2つ目の販売費は、自社の商品やサービスの販売に関係する経費であり、広告宣伝費や営業職の給与、発送費などが例として挙げられます。
その他の利益
営業利益の他にも以下の4つの利益があり、計算方法や営業利益との違いはそれぞれ以下の通りです。
売上総利益(粗利) | 売上総利益=売上高-売上原価 |
経常利益 | 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外損失 本業での利益と、それ以外の事業での利益を合計した数値に支払利息や社債利息などの営業外費用を差し引く。 |
税引前当期純利益 | 税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失 経常利益に固定資産の売却益などの臨時的に出た利益(特別利益)を合計したもの。 災害等による被害が発生した際は、特別損失として引く。 |
当期純利益 | 当期純利益=税引前当期純利益-各種税金額 税引前当期純利益から、法人税や住民税を差し引いたもので、最終的に企業に残る利益のこと。 |
売上総利益から販管費を差し引いた数値が営業利益であり、また営業利益に営業外損益を反映させた数値が経常利益です。
損益計算書から経営状況を読み取るためには、それぞれの計算方法や違いを頭に入れる必要があります。
営業利益のマイナス表示が意味すること
営業利益がマイナス表示の場合、経営状態が悪いのではないかと不安になる人もいるのではないでしょうか。
倒産につながるのかも含めて解説します。
会社のメイン業務での稼ぐ力が弱い
まずは、営業利益のマイナス表示は会社の本業での稼ぐ力が弱いといえるでしょう。
営業利益のマイナスが続く状態は業績の不振を表しているため、原因がわからない場合は特に迅速な対策が必要です。
原因としては売上高が低い、もしくは売上原価や販管費がかかりすぎている可能性があります。
マイナスになっている理由を分析し、原因別に適切な対策を判断しましょう。
営業利益のマイナスは倒産には直結しない
営業利益のマイナスは、倒産に直結するわけではありません。
一般的に倒産とは「企業経営が行き詰まり、返済しなければならない債務が返済できなくなった状態」を指します。
そのため、営業利益がマイナスになったとしても、資金調達が順調で取引先にお金を支払える場合は倒産しません。
利益の赤字・黒字よりも、キャッシュの有無が倒産に直接関係するのです。
ただし、営業利益のマイナス状態が長く続き、資金調達ができない企業は倒産する可能性が高いといえるでしょう。
金融機関からの借り入れが難しくなる
営業利益がマイナスになってしまうと、金融機関からの借り入れができない可能性が高まります。
金融機関は企業に返済能力があるか、損益計算書をもとに判断します。
特に営業利益は企業の収益力を示すため、重視される項目です。
営業利益がマイナスになっている企業は返済能力が低いとみなされ、金融機関からの信用を得ることは難しくなるでしょう。
【原因別】営業利益がマイナスのときの対策
倒産には直結しない営業利益のマイナスですが、適切な対策を取らないと大変なことになります。
まずは、営業利益に関係する「売上高」「売上原価」「販管費」を中心に、マイナスになった原因を突き止めます。
ここからは、原因に応じて効果的な対策をまとめました。
原因①売上が低いケース
営業利益がマイナスになる原因のひとつに、売上が低いケースが考えられます。
その場合、売上を上げるための対策を講じる必要があり、大きく分けて「単価を上げる」「販売数を増やす」の両方または一方を実施します。
具体的な方法は以下の通りです。
単価を上げるためには、自社の商品やサービスの値上げを検討しなければなりません。
新しい商品・サービスを開発してアップセルを狙う方法もあります。
また、新規顧客を効率的に増やすためには、飛び込み営業やテレアポだけでなく、ブログやSNSからの問い合わせを狙ってもよいでしょう。
リピーターには、新たに商品やサービスを提案し、セットでの購入を促すことで顧客ごとの単価・販売数を上げる手段があります。
効率を考えたうえで、自社に必要な営業施策を強化していきましょう。
原因②売上原価が高いケース
営業利益がマイナスの場合、売上原価の見直しが必要なケースもあります。
詳細については業界にも左右されますが、売上原価は原材料費や流通費など商品やサービスの製造過程で発生する費用のことです。
それらの費用を抑えることで営業利益の改善につながります。
たとえば、材料の仕入れ先に交渉したり、適切な在庫管理に取り組んだりする必要があるでしょう。
また、年に1回は複数の仕入れ先へ相見積もりをとり、適切な材料費等の把握も重要です。
まずは、売上原価のなかでも大部分を占める費用から削減に取り組んでいきましょう。
原因③販管費が高いケース
売上高や売上原価だけでなく、販管費が必要以上にかかっているケースもあるでしょう。
一般管理費や販売費の中で、無駄なコストがないかチェックを行います。
販管費の削減の具体的な対策として、以下を参考にしてください。
- 役員報酬や接待費などの削減
- 雇用や給与、退職金制度の見直し
- 広告宣伝の見直しや選定、コストダウン
- オフィスの光熱費や家賃などの見直し
販管費を細かく確認することで、本当に必要な経費なのかが見えてきます。
ただし、手当たり次第に削減するのではなく、業務の品質の低下につながるコストカットは避けるべきです。
最悪の場合、企業の強みや優れた人材を手放すことになるかもしれません。
特に人件費の削減を検討する際は、従業員のモチベーションが下がらないように細心の注意を払う必要があります。
たとえば、クラウドシステムの導入によってリモートでの業務を可能にし、従業員の交通費や残業代の削減を目指しましょう。
まとめ
今回は営業利益のマイナス表示が意味することや、プラスにするための原因別の対策をまとめました。
営業利益は企業の本業での稼ぐ力を表し、マイナスの場合は倒産に直結しないものの、原因の分析は迅速に行わなければなりません。
営業利益の黒字化のためには、売上高・売上原価・販管費を見直す必要があります。
闇雲に営業数を増やしたり、コストカットしたりするのではなく、原因に応じて適切な対処を取ることが重要です。
さまざまな改善策を試しながら、営業利益のアップを目指してください。