「ロボティック・プロセス・オートメーション」(RPA、ロボットによる業務の自動化)とは、パソコンを使って行う事務作業を、自動で遂行してくれるソフトウェアのこと。
RPAの活用によって「生産性の向上」や「人材不足の解消」などのメリットが期待できるため、大企業や金融機関を中心にRPAの導入が進められていますが、中小企業の経営者の中には、「ロボットに任せるほどの業務量がない」「うちの会社の事務作業は単純だから、まだ導入を考える必要はない」と感じる人もいるでしょう。
しかし、RPAは中小企業での導入も進み、導入事例も増えています。
RPAを導入することによるメリットや種類、導入時の注意点について分かりやすく解説します。
実際の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
中小企業がRPAを導入することによる効果とは
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、
- キーボードやマウスなど、パソコン画面操作の自動化
- ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
- 別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
- 社内システムと業務アプリケーションのデータ連携
- 業種、職種などに合わせた柔軟なカスタマイズ
- 条件分岐設定やAIなどによる適切なエラー処理と自動応答
- IDやパスワードなどの自動入力
- アプリケーションの起動や終了
- スケジュールの設定と自動実行
- 蓄積されたデータの整理や分析
- プログラミングによらない業務手順の設定
などの定型業務の簡素化を可能とするソフトウェアのこと。
株式会社MM総研(本社・東京都港区)の「RPA国内利用動向調査2020」によると、2019年11月時点でのRPA導入率は、大企業で51%、中堅・中小企業で25%となっていて(*1)、中小企業でも導入が進められていることが分かります。
中小企業は大企業に比べて業務量が少ないため、中小企業の経営者の中には、「RPAを導入する必要性がない」と感じている方もいるかもしれませんが、RPAを導入すれば、業務量の軽減や人材不足の解消が可能となるでしょう。
*1:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=391
RPAの導入事例
RPAの導入事例を3例、紹介します。
大阪府大東市のモーター・メーカーのS社(資本金8,850万円、社員243人)は、事務系社員の残業なし・定時退勤を実現するためにRPAを導入しました(*2、3)。
同社は、まず勤怠管理をRPAに任せました。タイムカードの打刻漏れや該当者への注意喚起、該当者の上司への報告を自動化。その後、他の業務のRPA化を進め、業務時間の削減に成功しています。
北海道函館市に本社があるK社(資本金2,000万円)は、文具品や日用品などをネット販売しているEC企業の代理店事業を展開しています(*4、5)。
K社は、約300件の顧客への請求業務を自動化しました。その結果、4・5人で10時間かかっていた作業が、RPAの導入で5.5時間に短縮できました。
東京都中央区の水産加工品の製造・販売のO社(資本金4,000万円、社員40人)はIT担当者がいないなかでRPAを導入しました(*6、7)。
自動化した作業は、生産管理です。RPA導入前は、エクセルの商品リストから商品コードや数量などのデータを手入力で基幹系システムに登録していましたが、これをすべて自動化することによって、業務時間を年200時間短縮しました。
*2:http://www.showadenki.co.jp/company/gaiyou.html
*3:https://www.usknet.com/jirei/syouwadenki/
*4:https://www.kond.co.jp/company/
*5:https://www.usknet.com/company/news/2019/0109
*6:https://okafoods.jp/company/history.html
*7:https://okafoods.jp/blog/okafoodsrpa/
RPAはデスクトップ型、サーバ型、クラウド型の3タイプ
RPAには、デスクトップ型、サーバ型、クラウド型があります。
まず、デスクトップ型RPAは、パソコンにRPAソフトがインストールされているもの。
中小企業で事務担当者が1人や数人の場合、デスクトップ型RPAが1台あるだけで業務効率は格段に向上するでしょう。
次に、サーバ型RPAは、社内にサーバを設置して、複数のパソコンを動かすタイプのもの。
総務の事務作業や経理の事務作業、在庫管理の事務作業や販売管理の事務作業を一気にRPA化したいときは、サーバ型か、次に紹介するクラウド型がよいでしょう。
そして、クラウド型は、RPAサービスを提供する会社がサーバを持ち、インターネットでRPAの機能を顧客企業に販売する形態のもの。
サーバで複数のパソコンに事務作業をさせるのはサーバ型と同じですが、クラウド型を使えば、RPAのユーザー(顧客企業)は自社でサーバを持つ必要がありません。
RPAを導入に際して
事務作業の進め方は、企業ごと、事務担当者ごとに異なります。その千差万別な作業を自動化しなければならないので、RPA化は多くの場合、オーダーメードになります。
RPAサービス会社の担当者は、ユーザー企業の担当者に、自動化する作業内容について詳細に尋ね、RPA化を進めていきますが、作業の難易度が高くなるにつれて、導入コストも高くなります。
RPAの導入を決めた会社はRPA導入チームを編成し、そのチームが業務を洗い出したり、RPAサービス会社を選定するとよいでしょう。
RPAには標準的なソフトもあり、比較的安価に導入できますが、その場合はRPAソフトに業務を合わせる必要があるため、RPAの標準ソフトを導入する際には、作業内容を見直すことが必要です。
まとめ
RPAの導入は、「コンピュータにソフトをダウンロードして終わり」ではないため、導入開始時は手間がかかりますが、その手間はRPAが稼働し始めればすぐに取り返すことができます。
人手不足や業務の効率化、生産性の向上や労働時間の削減などの悩みを抱えている企業は、RPAの導入を積極的に検討するといいでしょう。
<参考>